暗号通貨の「ならず者」国家が企てる米ドル弱体化計画
米シンクタンクの新たな報告書によると、ブロックチェーンベースのデジタル通貨が、世界経済における米国の優位性を支える米ドル基軸通貨体制を揺るがす可能性がある。米国の敵対国のいくつかは、暗号通貨を利用して伝統的な金融システムを回避することで、米国の経済制裁に対処しようと考えている。 by Mike Orcutt2019.08.20
米国はドルの優位性のおかげで、世界金融システムを支配する独特の地位を謳歌している。しかし、敵対国の中には、暗号通貨がこの数十年来の金融システムを回避するうまい手段になると考える国もあるようだ。
この理屈を現実のものにしようと2度目の試みに取り組んでいる国がある。ニコラス・マドゥロ大統領率いるベネズエラ政府は昨年、国が後押しする暗号通貨「ペトロ」を発行した。米国による制裁措置の回避を目的としたあからさまな試みであるこの計画は、未だに軌道に乗っておらず、目論見は失敗したとの認識が広まっている。しかし、マドゥロ政権は今度はビットコインに目を向けているようだ。
スペイン紙のABCは7月下旬、マドゥロ政権が航空券税収の支払いをビットコインを経由して最終的にドルに換金する新しい計画を考案したと報じた。空港関係者が語った話として、ベネズエラ政府高官はデジタル・ウォレットを使用してデジタル通貨を香港やロシア、中国、およびハンガリーの取引所へ送金し、そこで換金して得たドルの現金を取引所のある国々にあるベネズエラ政府の口座に送金するとしている。この方法で、ドル基軸の金融システムにおいてベネズエラ政府の口座利用を阻止する米国の制裁措置を回避できる。
ブロックチェーン技術を利用すれば、米国の権力が及ぶ範囲外で機能する新たな金融システムの基盤を形成できると考えているのはベネズエラの主導者だけではないようだ。新たに発表された報告書によると、イラン、ロシア、そして中国が間もなく「暗号通貨のならず者」同盟の仲間入りを果たすかもしれない。
米ドルは世界の準備通貨として広く受け入れられている。つまり、米国以外の各国政府は米ドルを備蓄し、そのドルを使って国際貿易に参加している。したがって、世界貿易の大部分が米国の銀行を経由する必要があり、対立が起こったときに米国政府は、敵対国のドルへのアクセスを遮断することで影響力を発揮できる。ワシントンD.C.のシンクタンクである民主主義防衛財団(FDD)が発表した新たな報告書によると、何十年もの間、「米国主導の世界金融システムの経路を通過せずに大規模な国際貿易を実行する」良い方法はなかった。しかし、ブロックチェーン技術を利用して「新しい経路が開発されつつある」という。
報告書の共同執筆者であるヤーヤー・ファヌーシーによれば、近い将来、既存の暗号通貨と暗号通貨取引所を利用して、(ベネズエラで実施されているような)小規模な制裁措置回避工作が実行される可能性が高いという。事実、すでに北朝鮮が実施している。専門家委員会が3月に国連に提出した報告によると、北朝鮮の国家ぐるみのハッカー集団が、2017年から2018年にかけて、多数のオンライン取引プラットフォームから5億ドル相当以上の暗号通貨を盗んだという。
ファヌーシーと同報告書の共著者であるトレヴァー・ローガ …
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