億万長者のイーロン・マスクが出資し、動物実験によって脳コンピューター・インターフェイスの開発を進めてきたニューラリンク(NeuraLink)が7月16日、ついにその新しいデザインを発表した。ニューラリンクのプロトタイプは、何十本もの細いワイヤーを脳につないだものであり、最終的には十分に小型化して頭蓋骨の内側に格納し、無線電波を発信することを目指している。
一方、自動車事故で背骨を骨折し、胸から下が麻痺しているネイザン・コープランドは、実際に機能する脳インターフェイスをすでに埋め込んでいる数少ない人間の一人だ。コープランドは、先端の尖った4個のシリコン電極パッド「ユタ・アレイ(Utah Array)」を脳内に埋め込んでいる。頭の最上部にあるソケットを通じて外界に接続して、ロボットやコンピューターを制御したり、感覚を脳に送り返したりする仕組みだ。
コープランドは2014年からこの脳コンピューター・インターフェイスを埋め込み、ピッツバーグ大学のマイケル・ボニンガー教授とアンドリュー・シュワルツ教授が率いる研究プロジェクトに参加している。ニューラリンクの発表について、コープランドに話を聞いた。
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——脳コンピューター・インターフェイスに関するイーロン・マスクの計画についてどう思いますか?
とても刺激的だと思います。将来的には彼らの思うとおりに機能するかもしれませんが、いまはおそらくそれほどうまく機能しないでしょう。数年前、私はイーロン・マスクが脳インターフェイスに取り組んでいると聞いたときには、すぐにでもそこに行きたいと言いました。それは冗談だったのですが、それが私の脳内に移植されたら何をしようかと考えるのは面白いことです。私は5年間、脳インターフェイスを付けていますが、FDA(米国食品医薬品局)はいずれインプラントを取り出す必要があるかもしれないと言っています。ニューラリンクは、インプラントの寿命や、多数の電極についても話しました。私は常々、もっと電極を私の中に入れてくれても良いのにと言っているのです。
——もっと電極を入れてほしいと思うのは、なぜですか?
基本的には、電極の数が多いほど、信号を記録するニューロンの数が増えるので、より高度なタスクが簡単にできるようになるのではないかと考えるからです。いまは、右腕と手について考えることに限られていますが、もっとコントロールできれば素晴らしいと思います。もっとビデオゲームをしたいといつも思っていますから。
——事故に遭う前は、どのような仕事をしてましたか?
ペンシルベニア州立大学でナノ加工技術について学んでいました。仕事には就いておらず、学校に通っていたのです。
——脳インプラントを着けることは、仕事だと考えていますか?
はい(笑)、そのとおりです。政府もそう思ってくれたら良いのですが。でもこれは、障害とかそういうものについて大げさに言うことになってしまいます。私は実験室で試験をするために週12時間を費やしており、片道1時間を運転しています。毎月報酬をもらい、走行距離に応じた交通費と高速代が支給されています。
——役職名は何ですか?
ええと、研究参加者……ですかね? ユタ・アレイの開発企業のブラックロック・マイクロシステムズ(Blackrock Microsystems)は、私たちのことを「BCI(脳コンピューター・インターフェイス)パイオニア」と呼んでいます。私はユタ・アレイを4個、装着しています。
——自分の心でモノをコントロールできるのは、どんな感じですか?
とても刺激的ですね。私のように事故に遭って、できることが制限され、自分が置かれた環境内でやり取りできることも制限されている場合、とても刺激的でやりがいがあります。たとえ健康上の利点が無いとしてもそうでしょう。
——このインターフェイスで何をするのが好きですか?
ビデオゲームですね。いまはたいてい、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」をプレイしてい …