KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
脳コンピューティングのブレークスルー、超伝導ニューロンを設計
GETTY
コンピューティング Insider Online限定
Superconducting neurons could match the power efficiency of the brain

脳コンピューティングのブレークスルー、超伝導ニューロンを設計

MITの研究者たちが、超伝導ナノワイヤーを用いて、生物のニューロンに似た特性を持つ人工ニューロンを設計した。実行速度と消費電力の両面で、生物のニューラル・ネットワークに匹敵する性能を持つデバイスを構築する基盤となる可能性がある。 by Emerging Technology from the arXiv2019.09.13

人間の脳は、科学の知る限り、最も卓越したコンピューティング装置だ。現代のマイクロプロセッサーのギガヘルツのクロック速度に比べ、人間の脳はわずか数ヘルツというカタツムリのような速度で動作している。

脳の強みは、毎秒10億もの多数の計算を同時に実行できるところだ。従来のコンピュータではまだ解決できていない問題(運転、歩行、会話など)を脳が簡単に解決できるのは、この並列処理のおかげだ。

さらに印象的なのは、脳がポリッジボウル(お粥を入れるボウル)程度の大きさのサイズで、これらすべてを実行するということである。これに比べて、世界で最も強力なスーパーコンピューターは、大きな町よりも大量の電力を消費する。

コンピューター科学者たちが人間の脳のコンピューティング性能をニューラル・ネットワークで複製したいと考える理由はそこにある。

しかしこれは、「言うは易く行うは難し」だ。 通常のチップをニューラル・ネットワークとして稼働するようにプログラミングすることは可能だが、それには莫大なコンピューティング能力と大変なエネルギーを要する。

コンピューター科学者たちは、人工ニューロンを作り、それを脳のようなネットワークで接続できないかと考えている。これが実現すればエネルギー効率が大幅に向上する可能性があるが、脳の効率に近い設計を考え付いた人はこれまで誰もいなかった。

しかし、それも今日からは過去の話になりそうだ。マサチューセッツ工科大学(MIT)のエミリー・トゥーメイが2人の同僚とともに、多くの点で本物の脳のような働きをするナノワイヤー製の超伝導ニューロンを設計したのだ。このデバイスのエネルギー効率は、少なくとも理論的には、脳の効率に匹敵し、これまでのコンピューティング機器よりはるかに効率の高い新世代の超伝導ニューラル・ネットワークを構成できるという。

基本的な知識について少し記しておこう。ニューロンは、神経に沿って移動する電気的スパイクまたは活動電位の形で情報を符号化する。 脳のようなネットワークでは、ニューロンはシナプスと呼ばれるギャップによって互いに …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る