「リブラとは何ですか?」
フェイスブックのデジタル通貨プロジェクトを率いるデビッド・マーカスは先週、米国の議員による批判的な質問の集中砲火を受けた。マーカスはそのほとんどの質問に対して周到に練られた答えを繰り返し、デジタル通貨「リブラ」のプロジェクトでフェイスブックが目指すことをほとんど明らかにしなった。
ただ、7月17日に開催された下院金融サービス委員会の公聴会におけるパトリック・マクヘンリー下院議員(ノースカロライナ州選出)の質問が引き金となった堂々巡りの議論は、重要なことを明らかにした。それは、私たちは、政治家の助けなしでは、フェイスブックが提案しているデジタル通貨の正体を知ることはないだろうということだ。最終的な答えがどのようなものであれ、デジタルマネーと銀行業の未来に大きな影響を及ぼすだろう。
フェイスブックがリブラを提供する計画を明らかにしてから約1カ月経った。フェイスブックによると、リブラは、数十億人の人々が利用する新しい世界的な金融インフラの基盤になる可能性があるという。リブラに焦点を当てた先週の2つの公聴会(7月16日に上院銀行委員会の公聴会も開催された)で示されたとおり、米国の最高機関である連邦議会において、リブラ・プロジェクトに関するかなりの疑念、不安および混乱が依然として残っている。
すでに関連する概念を明らかに十分理解しているマクヘンリー議員が、マーカスを厳しく追及し始める際に「リブラとは何ですか」というような最も基本的な質問を浴びせたのは、恐らくそのためだろう。
リブラとは、マーカスによると、「準備金に裏付けられたデジタル通貨」だという。
これについて掘り下げる前に、用語の意味を紐解いてみよう。フェイスブックが説明したとおり、リブラ・コインは、ビットコインや他の人気のデジタル通貨が基礎としているのと同様の分散型台帳上で稼働するデジタル資産となる。価値が変動しやすいことで有名なビットコインとは異なり、リブラは安定した価値を保持するよう設計される。それを実現するため、リブラは米ドル、ポンド、ユーロ、円を含む法定通貨の「準備金」によって「裏付けられる」とフェイスブックは述べている。
デジタル通貨を法定通貨の準備金で裏付ける考えは新しいものではない。いわゆる「ステーブルコイン(安定通貨)」は、暗号通貨を法定通貨に交換することなく暗号通貨の特徴である価格変動から利益を守るための手段として、暗号通貨トレーダーに人気がある。一方、リブラは複数の通貨「バスケット」に裏付けられる初のデジタル通貨となる。他のデジタル通貨はすべて、1つの法定通貨(ほとんどの場合、米ドル)に裏付けられてきた。
「リブラは有価証券ですか?」とマクヘンリー議員がマーカスに質問を投げかけた。有価証券とは、株式や債券など、金銭的価値を有する金 …