KADOKAWA Technology Review
×
ついにベール脱ぐマスクの脳インターフェイス、元関係者の証言
AP Photo/Jae C. Hong
人工知能(AI) Insider Online限定
Elon Musk’s brain-interface company is promising big news. Here’s what it could be.

ついにベール脱ぐマスクの脳インターフェイス、元関係者の証言

長らく謎に包まれていたイーロン・マスクの脳機械インターフェイス企業、ニューラリンクが初めて活動内容を明らかにした。同社に参加した科学者の研究実績などから、その研究内容を予測する。 by Antonio Regalado2019.07.18

イーロン・マスクが立ち上げた脳コンピューター・インターフェイス企業「ニューラリンク(Neuralink)」は7月16日、ライブストリーミング・イベントを開催し、これまで謎に包まれていた同社の活動内容を初めて一般公開する。

※日本版編注:この記事は7月16日の発表直前に公開されたものです。16日の発表についてはこちらの記事を参照。

https://twitter.com/neuralink/status/1149133717048188929?ref_src=twsrc%5Etfw

2016年7月にニューラリンクの創業を発表したイーロン・マスクは、一流大学の神経科学者を集め、人間の脳を人工知能(AI)ソフトウェアに直結するという目標を追求してきた。創業発表以来、謎に包まれていたニューラリンクだが、今回のイベントでこれまでの動向が明らかになる。

ニューラリンクの情報は(この記事を執筆している時点では)すべて極秘扱いで、憶測しかできないが、MITテクノロジーレビューはあえて今回の発表内容を予測してみた。これまでに入手可能な証拠から、ニューラリンクはサルの脳への「高帯域幅」接続を発表するものと思われる。極薄の柔軟な電極を使い、一度に多数のニューロン(神経細胞)の活動を記録することで大量の情報を抽出しようというものだ。この高帯域幅接続を使って、サルが思念だけでビデオゲームをプレイするなど、何かすばらしいことが披露されるかもしれない。

マスクが多額の資金を費やして脳情報の解読を目指すプロジェクトだが、今回のイベントの内容に関わらず、「ニューラリンクの脳インターフェイスは実際、何の役に立つのか?」「ニューラリンクはその目的を達成できる技術を持っているのか?」という難問に対し、人々を満足させられるような回答をするのに苦労するだろう。

テスラ(Tesla)とスペースX(SpaceX)の創業者でもある億万長者のマスクによると、人類がAIの進歩に追従していくためには、人間の脳をインターネットに接続する必要がある。それが、2017年4月にWebサイト「ウェイト・バット・ホワイ(Wait But Why)」の長文投稿の中で彼が掲げた未来構想だ。だが、私たち全員がサイボーグになる前に、ニューラリンクのような企業はまず、なぜ人間の頭の中に金属コンピューターチップを埋め込むべきなのか、実際の医学的な根拠を示す必要がある。

「そのためには、霊長類の疾患モデル動物で、多数のニューロンを確実に記録できることを実証する必要があると思います」。クリスチャン・ウェンツはこう語る。ウェンツは自身が設立したニューロテクノロジーのスタートアップ企業を、競合する脳コンピューター・インターフェイス企業「カーネル(Kernel)」に売却したテクノロジストだ。「動物での実証は、電極類を人間の脳に挿入する理由を米国食品医薬品局(FDA)に正当化するために必 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Who’s to blame for climate change? It’s surprisingly complicated. CO2排出「責任論」、単一指標では語れない複雑な現実
  2. Who’s to blame for climate change? It’s surprisingly complicated. CO2排出「責任論」、単一指標では語れない複雑な現実
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る