ウィーチャット(WeChat)は、いろいろな意味でインターネットの未来を垣間見せてくれる。
中国を拠点とし、世界中に11億人以上のユーザーを持つウィーチャットは、世界的に見て極めて進んだ、人気のあるアプリの1つだ。ウィーチャットの特筆すべき点は、中国人の生活の隅々に浸透していることにある。多くの中国人がおしゃべりや支払い、遊び、移動などの手段にウィーチャットを使う。マーク・ザッカーバーグがフェイスブックの未来を考えるときに、ウィーチャットは競合相手としての重要性をますます増している。
この、いわゆる「スーパー・アプリ」は、単なるメッセージングや食事、移動、支払いのための手段にとどまらない。ウィーチャットが抱く包括的な野心には、世界最先端を行く、即効的で広範囲な検閲技術が含まれているのだ。
トロント大学シチズン・ラボの新たな研究により、ウィーチャットのテキスト・画像のリアルタイム自動検閲が、政治的な議論にどのように統制力を発揮しているかが明らかになった。対象となる話題は、米国との貿易戦争などの国際問題から、2018年に起こった中国の鉱業会社2社間の数十億ドル規模の係争で紛失した法廷資料などの国内スキャンダルまで、実にさまざまだ。こうした話題に関するあらゆる議論に対する検閲の有無は、最終的には中国政府の決定に従う。
ウィーチャットの検閲には2種類ある。フェイスブックのタイムラインに似た公開機能「モーメンツ(Moments)」で広く公開する投稿は、アルゴリズムによって綿密に調べられ、フィルターがかけられる。完了までに10秒以上かかることもあり、動作はソーシャルメディアにしてはかなり遅い。一方、一対一やグループでのメッセージのやり取りはまったく別の方法を使っている。というのも、メッセージの場合は親密で瞬間的な会話になることが多く、リアルタイムの検閲が必要となるからだ。
テキストの検閲はそれほど難しくないが、画像の場合、特に即座に調べようとすると難 …