「彼はいつも私がどこにいるのか、メールやテキストメッセージ、ソーシャルメディアで誰と会話をしているのか、何もかも知っていました。彼は何でも見ることができました。私にプライバシーはありませんでした」。
こう話すのは、アンナ(仮名)だ。アンナの経験は決して他人事ではない。何千人もの人々(そのほとんどは女性だ)の日常的な現実となっている。
なぜなら、本人の知らないところで、パートナーがデバイスにストーカーウェアをインストールしているからだ。ストーカーウェアを使えばスマートフォンの活動を監視できる。アプリは相手のデバイスにアクセスを求める場合もあるが、一見無害なダウンロードと見せかけてインストールさせる場合もある。被害者がタップした瞬間に、アプリはデバイスに侵入する。そして、すべてにアクセスできるようになる。
アンナの場合、ストーカーウェアは画像メッセージに偽装されていた。送り主は出会って数週間後にデートした相手だった (仮にデイビッドとする)。デイビッドによる監視は2016年6月までの2年間、暴力的な関係に過激さが増し、命の危険を感じてアンナが逃げ出すまで続いた。
アンナはデートから2カ月経つまで、デイビッドを疑うことはなかった。「デイビッドは私がフェイスブック・メッセンジャーで親戚と非公開で共有していた内容にコメントしたんです。その後、彼がすべてを追跡していたことに気付きました」と話す。
デイヴィッドに会う前、アンナは自分が誰かに追跡されるとは考えもしなかった。「そんなことができることさえ知りませんでした」。
ストーカーウェアに関する研究は極めて少なく、まだ全容は掴めていない。そのため、実際の問題の大きさを把握するのは難しい。この現象に関する数少ない論文の1つで、コーネル大学の研究者が2018年10月に書いた論文では、明らかにストーカーウェアと判断できるツールを数十個発見している。しかし大半は子どもの安全ツールや防犯ツールに見せかけた「両用」アプリで、簡単に悪用してパートナーを監視できると論文は指摘する。こうした曖昧さがストーカーウェアの拡散に対する課題を複雑にしている。
コーネル大学のコンピューター・サイエンス研究者で、論文の共同著者であるラフル・チャタジー(博士課程生)は、「こう …