あなたを襲う「ストーカーウェア」の知られざる脅威
交際相手などのスマートフォンにひそかにインストールされ、相手の位置情報やメッセージを監視する「ストーカーウェア」が広まっている。被害者や識者は、虐待的な関係を生み出す温床となるアプリに対する審査の強化を訴えている。 by Charlotte Jee2019.08.16
「彼はいつも私がどこにいるのか、メールやテキストメッセージ、ソーシャルメディアで誰と会話をしているのか、何もかも知っていました。彼は何でも見ることができました。私にプライバシーはありませんでした」。
こう話すのは、アンナ(仮名)だ。アンナの経験は決して他人事ではない。何千人もの人々(そのほとんどは女性だ)の日常的な現実となっている。
なぜなら、本人の知らないところで、パートナーがデバイスにストーカーウェアをインストールしているからだ。ストーカーウェアを使えばスマートフォンの活動を監視できる。アプリは相手のデバイスにアクセスを求める場合もあるが、一見無害なダウンロードと見せかけてインストールさせる場合もある。被害者がタップした瞬間に、アプリはデバイスに侵入する。そして、すべてにアクセスできるようになる。
アンナの場合、ストーカーウェアは画像メッセージに偽装されていた。送り主は出会って数週間後にデートした相手だった (仮にデイビッドとする)。デイビッドによる監視は2016年6月までの2年間、暴力的な関係に過激さが増し、命の危険を感じてアンナが逃げ出すまで続いた。
アンナはデートから2カ月経つまで、デイビッドを疑うことはなかった。「デイビッドは私がフェイスブック・メッセンジャーで親戚と非公開で共有していた内容にコメントしたんです。その後、彼がすべてを追跡していたことに気付きました」と話す。
デイヴィッドに会う前、アンナは自分が誰かに追跡されるとは考えもしなかった。「そんなことができることさえ知りませんでした」。
ストーカーウェアに関する研究は極めて少なく、まだ全容は掴めていない。そのため、実際の問題の大きさを把握するのは難しい。この現象に関する数少ない論文の1つで、コーネル大学の研究者が2018年10月に書いた論文では、明らかにストーカーウェアと判断できるツールを数十個発見している。しかし大半は子どもの安全ツールや防犯ツールに見せかけた「両用」アプリで、簡単に悪用してパートナーを監視できると論文は指摘する。こうした曖昧さがストーカーウェアの拡散に対する課題を複雑にしている。
コーネル大学のコンピューター・サイエンス研究者で、論文の共同著者であるラフル・チャタジー(博士課程生)は、「こう …
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