スペースX(Space X)は東部標準時6月25日午前2時30分(日本時間同16時30分)、「ファルコンヘビー」ロケットをフロリダのケネディ宇宙センターから打ち上げた。今回の打ち上げは、世界最大のロケットであるファルコンヘビーにとって3度目のミッションであり、米国防総省などの顧客から委託された24基の人工衛星を積載している。
そのうちの1基であるキューブサット衛星「ライトセイル2号(LightSail-2)」の巨大な太陽光反射帆は、およそ1週間で展開し、太陽からの光の運動量を捕捉して宇宙船を推進するエネルギーへと変えるだろう。
ファルコンヘビーは、米国航空宇宙局(NASA)から依頼された装置もいくつか運搬している。興味深いのは、宇宙船に搭載されたシステムを利用して針路を決定することを可能にする「深宇宙原子時計」だろう。ファルコンヘビーはまた、宇宙葬を手がける企業セレスティス(Celestis)から依頼された152人分の遺灰も運んでいる。
だが、このミッションのもっともわくわくする運搬物は、何と言っても「ライトセイル2号」だ。クラウドファンディングによって資金を調達した惑星協会は、衛星打ち上げを10年間も待ちわびてきた。来週のどこかの時点で巨大な太陽光反射帆が広がったとき、元は1970年代にカール・セーガンによって提案されたテクノロジーが実践で使い物になるかどうか、初めて調べるチャンスがやって来るだろう。
ライトセイル2号の目標は、地表から720キロメートルに達した後、1年間に渡って軌道上を周回することだ。地上のエンジニアは反射帆の角度を調整することによって、ちょうどヨットと同じ要領で、ライトセイル2号を操縦できる。だが、ライトセイル2号は風の代わりに、マイラー(ポリエステルの一種)製の反射帆にぶつかってくる光子のエネルギーを使って動く。
太陽光反射帆は、長きにわたってアーサー・C・クラークやジュール・ヴェルヌをはじめとするSF小説の題材にされてきた。反射帆は、理論上は時間をかければ驚異的なスピードに達することができるため、星間旅行の可能性を秘めたテクノロジーとして論じられてきたのだ。
後味の悪い話もある。スペースXのビジネスモデルの核になっているのは、再利用型ロケットだ。今回の打ち上げでは米国防総省の機器が搭載されている。同省が使用済みロケットでの打ち上げを許可したのはこれが初めてだ。
ファルコンヘビーのツインブースターは無傷でケープ・カナベラルに着陸したものの、中央ブースターはドローン船上への着陸の際にターゲットを見失い、水中で爆発してしまった。ブースターの回収に失敗したのはこれが2度目だが、ブースターがドローン船に戻ってくるスピードが速いため、今回の着陸は極めて困難なものになるだろうとスペースXはあらかじめ宣言していた。