チベット高原は海抜がほぼ5000メートルに及ぶ広大な高地であり、しばしば「世界の屋根」と呼ばれる。南の国境が世界最高峰の山岳地帯に接し、北の国境が砂漠地帯に接しているチベット高原は、地球上で最も隔絶された場所のひとつだ。
だが、その極端に高い標高が科学者にとってチベット高原を価値ある場所にしている。1990年、科学者はここに観測所を建造した。目的は、高エネルギー宇宙線が大気に突入したときに上層大気から降り注ぐ素粒子のシャワーを研究することだった。高地では粒子を吸収する大気が地上より薄いため、この研究は高地でする方がうまく行くのだ。
それ以来、いわゆる「チベット・エアシャワー・アレイ(Tibet Air Shower Array)」は、天体物理的な現象によって膨大なエネルギーに加速された粒子である高エネルギー宇宙線を非常に数多く記録している。超新星、活動銀河核、謎めいた未確認のエネルギー源などだ。
だが、チベット・エアシャワー・アレイでは、異なるエネルギー源、つまり高エネルギー光子によって引き起こされたエアシャワーも捕捉されている。これらの謎の光子も、高エネルギー粒子と宇宙マイクロ波背景放射の間の相互作用などの天体物理的現象によって生成されている。したがって、これらの光子は、これらを生成するプロセスおよびプロセスが発生する環境に関する独自の知見をもたらす可能性がある。
長年にわたって、チベット・エアシャワー・アレイは、数十テラ電子ボルト(TeV:1テラ電子ボルトは 1012電子ボルト)に及ぶエネルギーの光子を多数発見している。このエネルギーは、地球上で生成できる最も高いエネルギー光子のエネルギーにほぼ匹敵する。だが、それより大きなエネルギーを持つ光子を見つけた者はこれまでいなかった。
しかし、ここに来て、チベット・エアシャワーのガンマ線共同チームの研究者たちが初めて、100 T …