私たちは空間の次元を3つと時間の次元を1つ持つ、いわば3+1次元の宇宙で暮らしていると宇宙論の学者たちは言うが、それはなぜなのだろうか。他の組み合わせ、例えば空間の次元が4つあるとか、時間の次元が2つあるような宇宙は、なぜだめなのだろうか。
この数十年の間、物理学者はこの問いの答えを探るべく、別の宇宙の性質を調べて、そこに複雑な生命が存在し得るかどうかを調べてきた。彼らの出した結論は、4つの空間次元を持つ宇宙や、2つ以上の時間次元を持つ宇宙では生命が存在できないというものだった。そのため、人間が3+1次元の宇宙に存在することは必然であると物理学者たちは言う。
これは人間原理という名称でも知られている。宇宙は必ず観測者が生存するために必要な性質を備えているという考え方だ。
しかしもっとシンプルな、たとえば2+1次元の宇宙ではどうだろうか。これまでの物理学者の推論では、空間の次元が2つだけの宇宙は、生命が存在するために必要となる複雑性を持ち得ないとされてきた。さらに、2次元の宇宙では重力が働かず、太陽系のような物体が形成されないとも考えられている。だがそれは本当だろうか。
カリフォルニア大学デイビス校のジェームズ・スカーギル博士の研究によって、その答えが明らかになった。スカーギル博士はおおかたの予想に反し、2+1次元の宇宙が重力と、生命発生に必要な複雑さを備え得ることを示した。この研究は宇宙論の学者や哲学者の唱える人間原理への反論であり、宇宙が今のような形になった理由について、宇宙論の学者たちは新たな理由を考え出す必要に迫られることだろう。
まず予備知識を見ていこう。科学界における最大の難問のひとつとして、なぜ物理学の法則は生命が発生できるよう絶妙に調整されているように見えるのかというものがある。たとえば微細構造定数の値は一見適当に決められたような値(およそ1/137)である。しかし、これまでに様々な物理学者が指摘してきたように、この値が少しでも違えば原子も、またそれ以上に複雑な物体も形成されなくなってしまう。そのような宇宙では生命は存在できない。
人間原理的な主張では、微細構造定数の値が違った場合、 …