最新テクノロジーを駆使した「ゲーム考古学」のアプローチ
マシンビジョン、人工知能(AI)、データマイニングなどの手法を駆使して古代のゲームについて研究する「ゲーム考古学」と呼ばれる学問分野が、新たに立ち上がりつつある。ゲームに関連する情報の単位である「ルディーム」を用いて、古代ゲームのルールを再構築し、現代のゲームにつながる「ゲームの進化系統樹」を作成することを目指す。 by Emerging Technology from the arXiv2019.06.26
1238年、中世スペインのカスティーリャ王国の国王であるアルフォンソ10世は、『Libro de los Juegos(ゲームの本)』という学術書を発行した。この本は97ページの羊皮紙でできており、その多くに美しいカラーのイラストが描かれている。また同書は、チェス、サイコロゲーム、バックギャモンといったゲームに関する最古の記述を含んでいる。
アルフォンソ10世はゲームを3つのカテゴリーに分類した。「馬に乗ってするゲーム」、フェンシングやレスリングといった「馬から降りてするゲーム」、「座ってするゲーム」である。さらに彼は、3つ目のカテゴリーを、「頭脳に依存するゲーム」、「運に依存するゲーム」、「頭脳と運の両方に依存するゲーム」に細分化した。
このような分類をしたアルフォンソ10世は、ルドロジー(ゲーム学)として知られる科学分野を確立した、いわば「ルドロジーの父」といえる人物だ。ルドロジーは、数学者、コンピューター科学者、社会学者などの間で大きな関心を呼んできた。
だがルドロジーには、これまで放置されてきた1つの領域がある。それは古代ゲームの研究だ。アルフォンソ10世やその他の歴史的人物が楽しんでいた古代ゲームはこれまで、独立した学問分野に発展することがなかった。
オランダのマーストリヒト大学のキャメロン・ブラウン准教授と同僚らによる研究により、こうした状況が変わろうとしている。ブラウン准教授らは、ゲームだけに焦点を当てた考古学の新しい研究分野を開拓している。この分野の目的は、古代ゲームおよび人間社会における古代ゲームの役割についての理解を深め、古代ゲームのルールを再構築し、現代のゲームにつながる「ゲームの進化系統樹」に古代ゲームの数々がいかに当てはまるのかを決定することだ。 ブラウン准教授らは、この学問分野を「アーケオルドロジー(ゲーム考古学)」と呼んでいる。
ブラウン准教授らは、この誕生したばかりの科学分野に対する意欲的な計画を持っている。彼らによると、この分野は、マシンビジョン、人工知能(AI)、データマイニングといった新しい手法のおかげで成果が得られやすくなっているという。これらの手法の組み合わせることで、古代ゲームを研究し、古代ゲームがいかに進化してきたかについて理解を深めるための全く新しい方法を得られる。
アーケオルドロジーの最初の課題は、関心の対象となるアクティビティ(ゲーム)を定義することだ。ブラウン准教授らは、良い判断が悪い判断に勝ち、身体的能力ではなく知的能力が報われるようなゲームである伝統的な戦略ゲームに関心を持っている。つまり、スポーツではないゲームだ。歴 …
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