産業用ロボット・アームの前に手を出すのは概してよい考えではない。この種の機械は素早く正確に動くことはできるかもしれないが、目も頭もすこぶる悪いので、「しまった」なんて言うこともなく嬉々としてあなたの腕をへし折ってしまうだろう。
だからこそ、ボストンの港近くに拠点を構えるスタートアップ企業「リアルタイム・ロボティクス(Realtime Robotics)」でテスト中のロボット・アームにいたずらを仕掛けるときには、ちょっと勇気が必要だった。部品をテーブルから拾い上げて箱の中に入れる動作を阻むようにロボットの前に手を伸ばしてみると、ありがたいことにロボットは一旦停止し、差し出した腕をさっと避けて、部品をきちんと箱に入れた。私の腕は無事だった。
このような洗練された適応性は、ロボティクス産業にとって非常に有用なものとなるだろう。人間との協調作業をこなせる産業用ロボットは存在こそするものの、低出力で動作の精度が低く、用途も限られる傾向にある。もっとも高性能かつパワフルな産業用ロボットは依然として、厳密に管理された環境下で、か弱くもろい人間たちとは離れた場所で働かなくてはならない。
ロボット工学技術者であるリアルタイム・ロボティクスのショーン・マレー共同創業者は、「人間とロボットが間近で働くことには不安がないとしても、技術者に依頼するコストをかけずに生産セルを改修したいことはあるかもしれません」と話す。
動作の問題
数多くの企業が問題の解決策を探っている。障害物を感知した際に組み立てラインの強力なロボットを停止させるセンサーをテストしている企業もある。リアルタイム・ロボティクスはさらに一歩踏み出して、実世界での動作に必要な低レベルの知能をロボットに付与しようとしている。この「低レベルの知能」は、人間や動物が腕や脚を動かすたびに当たり前に活用している身体認識に該当する …