臓器不足解消に挑むハーバード大教授、ブタの臓器をサルで試験中
ハーバード大学の遺伝学者であるジョージ・チャーチ教授が共同創業したイージェネシスはいま、移植用ヒト臓器の深刻な不足を解決するために、遺伝子を改変したブタの臓器を使った実験をしている。現在、サルで試験をしている段階だが、ブタの臓器を人間で試す前に克服しなければならない重要な問題が依然としていくつかある。 by Karen Weintraub2019.06.20
ハーバード大学の遺伝学者であるジョージ・チャーチ教授は2017年、遺伝子を編集したブタの臓器が2年以内、ひょっとすると1年以内に人間に移植されるだろうと予測した。
チャーチ教授はいま、「私は間違っていました」と認める。
チャーチ教授が共同創業したスタートアップ企業、イージェネシス(eGenesis)は、遺伝子編集技術のクリスパー(CRISPR)で遺伝子を改変したブタの臓器を、安全に、拒絶反応なく人間に移植できるようにするという野心的な計画で話題になった。移植に利用できるヒト臓器の深刻な不足という問題を解決できる可能性があるからだ。
だが、人間での試験はこれまで実施されていない。その代わり、イージェネシスは現在、ボストンのマサチューセッツ総合病院で、ブタから取り出した臓器をサルで試している。実験は、病院の移植手術責任者であるジェイムズ・マークマン医師が主導している。
「私たちがいま手がけているのは、必要な手順です」と、イージェネシスの顧問も務めるマークマン医師は語る。「改変した臓器が大型動物で検証されない限り、ヒトの体内に移植するのは難しいでしょう」。
マークマン医師もイージェネシスも、研究対象の臓器や、実験に使うサルの種類について詳しく説明しようとはしない。両者は、外科史上最高の技術が施されたブタ臓器が実験に使用されているとしている。
医学界では何十年もの間、ブタの腎臓や心臓、それに肺までもヒトの患者に移植して、機能不全の臓器と交換することで、臓器不足を解決したいと考えてきた。現在、10万人以上の米国人が移植リストで待機している。
ここ数年、そのような「異種移植」に向けた大きな進展が科学界でいくつか見られる。米国立衛生研究所(NIH)の研究者らは、ブタの心臓をヒヒの体内で(ヒヒ自身の心臓と同時に)約2年間動かすことに成功した。またドイツの外科医らは昨年の暮れ、ブタと心臓を交換した数匹のヒヒが約6カ月間生きたと報告した。
こうした実験には、ユナイテッド・セラピューティクス(United Therapeutics)の子会社であ …
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