KADOKAWA Technology Review
×
中東襲った「殺人」マルウェア、米国・アジアの電力会社に照準か
Justin Sullivan / Stringer
Hackers behind the world’s deadliest code are probing US power firms

中東襲った「殺人」マルウェア、米国・アジアの電力会社に照準か

2017年に中東の石油化学プラントを操業停止に追い込んだマルウェア「トリトン」を操るハッキング集団が、米国やアジアの電力会社をターゲットとして調査を進めていることが明らかになった。 by Martin Giles2019.06.21

企業向けサイバーセキュリティ会社のドラゴス(Dragos)は、ハッキング集団である「ゼノタイム(Xenotime)」が米国および他国の電力会社への攻撃を念頭に初期段階の準備を進めている可能性を示す証拠を発見したと発表している。ゼノタイムは 2018年末以降、ターゲット企業に対し、パスワードの突破や、社員のログイン認証情報の窃取を試みているという。

ゼノタイムは、深刻な産業事故を防ぐための最後の砦である安全システムをダウンさせる「殺人」マルウェア、トリトン(Triton)を操るグループである。トリトンが2017年にサウジアラビアの石油化学プラントで発見された時は、被害を未然に防ぐことができた。 サイバーセキュリティの専門家は、ダムから原子力発電所に至るまで、あらゆる分野における安全管理を攻撃するためにトリトンが使われる可能性があると述べている。

ドラゴスは、ゼノタイムが米国およびアジアでターゲットとしている企業の調査はまだごく初期段階であり、これまでのところ、同グループがシステムに侵入してトリトンを導入した兆候は見つかっていないと考えている。

しかし、油断は禁物だ。一部のセキュリティ専門家がロシア政府との関連の可能性を疑っているゼノタイムは、忍耐強く粘り強い。 彼らは1年以上もかけてサウジアラビアのプラントのシステムに徐々に侵入し、トリトンを仕掛けたのだ。

人気の記事ランキング
  1. AI reasoning models can cheat to win chess games 最新AIモデル、勝つためなら手段選ばず チェス対局で明らかに
  2. OpenAI just released GPT-4.5 and says it is its biggest and best chat model yet 限界説に挑むオープンAI、最後の非推論モデル「GPT-4.5」 
マーティン ジャイルズ [Martin Giles]米国版 サンフランシスコ支局長
MITテクノロジーレビューのサンフランシスコ支局長として、コンピューティングの未来とシリコンバレーの企業を対象に取材しています。MITテクノロジーレビューに参加する以前は、ビジネステクノロジー分野に焦点を当てたベンチャーキャピタルで調査と出版を主導しました。それ以前は、エコノミスト(The Economist)で記者兼編集者として長年にわたって勤務した経験もあります。最近は、西海岸に拠点を置くテックライターとして活躍しています。
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る