意識のレベルを測定するのは難しいことで知られている。代表的な測定方法として、「テニスをしていると想像してください」などの指示を被験者に与えて、さまざまな刺激を受け取る個人の脳をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)で検査することがある。脳の活動パターンが変化することで測定が可能になる。
しかし、fMRI装置は高価で場所を取るうえ、特に昏睡状態または最小限の意識しかない状態の患者に対して検査を実施するのは困難だ。fMRI以外にも、脳波計を用いて脳の電気活動を測定する方法もある。fMRI検査より簡単だが、覚醒しているかどうかを判断する電気信号の明確なマーカーに関して、一致する意見はまだない。
そのため、「意識が覚醒していること」を測定するより良い方法が切実に求められている。
この問題に、オーストラリアのモナシュ大学のロベルト・ムニョスらの研究チームが取り組んでいる。ムニョスらの研究チームは、脳が生成する信号の複雑性を利用して、ミバエの意識の覚醒レベルを測定する手法を見い出した。この手法を使うと、脳の信号を見るだけで、麻酔下のハエとそうでないハエを区別できる。
この新たな研究は、複雑性理論の確立された考えに基づいて、覚醒を測定する客観的な手法を提案する。人間に応用可能な手法だ。今回の研究は、意識に関する、実験的に検証可能な様々な新理論への関心の高まりを反映している。
まず、いくつかの背景となる知識を説明しておこう。近年の意識研究における最も重要なブレークスルーの1つは、「意識の統合情報理論」と呼ばれるアイデアだ。神経科学者のジュリオ・トノーニが …