中国の科学者である賀建奎(フー・ジェンクイ)元准教授は、遺伝子を編集した世界初の子どもを昨年誕生させたとき、より良い世の中を作ることを夢見ていた。誕生した双子の女児に施された遺伝子改変はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)への感染を防ぐと考え、ヒト胚の編集は多くの人に新たな希望をもたらすだろうとフー元准教授は語った。
ところが、フー元准教授の施した遺伝子改変によって、双子の女児は早世の危険にさらされているかもしれない。
フー元准教授はCCR5と呼ばれる遺伝子を編集したが、最新の論文によると、それに類似した遺伝子の突然変異が人間の寿命を平均して1.9年縮めるというのだ。
「明らかに、重大な影響を持つ突然変異です」と語るのは、カリフォルニア大学バークレー校の集団遺伝学者ラスムス・ニールセン教授だ。ニールセン教授は、英国の巨大遺伝子データベース「UKバイオバンク」に登録されている40万人のボランティアのDNAと死亡記録を調べていて、このことを発見した。「そのような突然変異はめったに起こるものではありません。でなければ、みんな早死にしてしまいますから」。
この発見は、遺伝子を編集して人間の能力を強化させることを狙うすべての人々に対して警鐘を鳴らしている。多くの遺伝子には複数の役割があり、科学者がそれらのバランスをいじり回せば、期せずして望まない副作用を引き起こしてしまう可能性が高い。
今年2月、フー元准教授が編集したCCR5遺伝子の変異が、脳卒中後の記憶回復に関わっていることが明らかになり、脳機能の変化にも役割を持っている可能性が示された。
「中途半端な理解に基づいて生殖細胞系列を改変する …