今年の感謝祭でノースカロライナ州立大学のポール・モズジャク教授(家禽学)は、自分の素晴らしいアイデアに人々がとうとう関心を向けてくれたことに感謝を捧げるだろう。
モズジャク教授は、19トンの培養槽で七面鳥肉の培養を目論んでいる。
モズジャク教授は、鳥類の筋肉細胞を実験室のフラスコで培養することにかけては世界的専門家だ。この目立たない研究は、動物性タンパク質を動物自身ではなくバイオリアクターで生産できるのではというアイデアのおかげて、科学の片隅から「細胞農業」に躍り出た。
「体外肉培養」とも呼ばれるテクノロジーは、かなり奇抜に見える。だが、肉を農場ではなくバイオテクノロジー企業で作れると考える環境保護主義者や動物愛護運動家、投資家から、この技術への支持が集まっている。
「今から何年も先に、スーパーで消費者が従来の肉と培養肉のどちらを買おうか迷っているとき、培養肉が同等の値段にはなっていると100%確信しています」とモズジャク教授はいう。
培養肉のアイデアが2013年に羽ばたいたのは、オランダの科学者マーク・J・ポストが英国のテレビに出演して実験室培養のハンバーガーを初めて調理し、試食した時だった。30万ドル以上の実験費用はグーグルの創業者セルゲイ・ブリンが支払った。
培養肉なら家畜への依存を減らし、資源を節約できると擁護者はいう。今年の夏、「動物を使わない動物製品」を奨励するニューハーベスト財団が開催した会議に、モズジャク教授はパネリストとして招かれた。サンフランシスコでの会議には他のイノベーターが招かれ、牛肉、ゼラチン、卵白、牛乳を実験室培養する構想を発表した。
モズジャク教授の研究は、七面鳥胸肉から取った消しゴム大の生体組織から出発する。次に幹細胞から分離させた衛星細胞を増殖させて融合し、既存のものと同じ筋繊維を作る。モズジャク教授はブドウ糖とアミノ酸の温かいスープの中で、増殖力の高い細胞を操り、七面鳥の体内にいるかのごとく振る舞うように細胞を仕向ける。
理論上の成長能力は膨大だ。栄養素と培養スペースが無限にあれば、1個の衛星細胞は3カ月間で75回分裂する。計算上は、1個の細胞から、20兆個以上の七面鳥ナゲットを生産できる量の筋肉が得られる。ベジタリアンの約半数は、実験室製の肉なら食べたいと答えた調査もある。
「私にとって筋肉はあらゆるタイプの組織や細胞の中で最も魅力的なのです」というモズジャク教授は、衛星細胞の研究で博士号を取った。「つまりですね、私は七 …