写真の発明後まもなく、何人かの犯罪学者は、犯罪者を撮影した顔写真にパターンがあることに気付いた。犯罪者には法制度を踏みにじる者にある、特有の顔をしているというのだ。
この論争で最も影響力のある発言者のひとりがイタリアの犯罪学者、チェーザレ・ロンブローゾ(1835~1909年)だった。ロンブローゾは、犯罪者は法律を順守する市民と比べて「先祖返り」しており、人間よりサルに近いと信じていた。ロンブローゾは、傾斜した額、異常なサイズの耳、非対称な顔つき、長い腕といったサルに似た特徴から犯罪者を見分けられると確信していた。ロンブローゾは統計学的にはデータを分析しなかったが、実際に自分の考えを証明する目的でたくさんの被写体を測定した。
この勇み足は、やがてロンブローゾが失脚する原因になった。イギリスの犯罪学者チャールズ・ゴーリングによって、ロンブローゾの概論は信用を落とした。犯罪者と犯罪者でない人間とを比較した身体的差異に関するデータを統計学的に分析していたゴーリングは、有意な差はないと結論付けた。
その後2011年まで、論争に進展はなかった。この年、コーネル大学の心理学者は、人間は実際、単に写真を見ただけで犯罪者とそうでない人間を区別するのが非常に得意だと示したのだ。統計学的に際だった特徴がないなら、どうしてそんなことがあり得るだろうか?
11月22日、中国上海交通大学のシャオリン・ウとシ・チャンの研究によって、ある種の回答が得られた。研究チームはさまざまなマシン・ビジョン・アルゴリズムを使って、犯罪者とそうでない者の顔を調査し、実験により違いがわかるかどうかを調べたのだ。
研究チームの手法は簡単だ。18~55歳の中国人男性1856人(半数は犯罪者)の正面写真(顔ひげなし)を撮影し、そのうちの90%を使って畳み込みニューラル・ネッ …