ジカ熱根絶で、WHOと民間企業には手法の違いがある
科学者はジカ熱を根絶する新手法を模索しているが、WHOは、自身の方法でジカ熱を長期的に根絶させようとしている。 by Jamie Condliffe2016.11.22
今年初め、世界保健機関(WHO)はジカ・ウイルスを国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に宣言した。しかし現在、その指定は解除されている。ジカ熱の重要性が弱まったのではなく、WHOは、粘り強く、たゆまぬ努力(応急策ではなく)によって、ウイルスは撃退できると判断し、長期的に取り組もうとしているからだ。
WHOで緊急事態対策計画の責任者を務めるピーター・サラマ・エグゼクティブ・ディレクターは「ジカ熱の重要性を引き下げたのではありません。WHOは長期的に取り組むプログラムを設置し、ジカ熱に引き続き対処します」とサイエンス誌に述べた。
ジカ・ウイルスは感染した人に軽度の症状を引き起こすだけで、多くの人は感染したことにまったく気付かない。しかし、ジカ・ウイルスは、小頭症の原因と考えられており、ウイルスに感染した妊婦からは、頭や脳が極度に小さい子どもが生まれる可能性がある。
ジカ熱対策の進展には、言い面と悪い面がある。まず、ウイルスを根絶させるために、遺伝子組み換え蚊をフロリダに放つ提案には、ついにゴーサインが出た。この取り組みは英国のオキシテック(Oxitec)が開発した遺伝子組み換えネッタイシマカに、ジカ熱拡大の抑制効果があるかどうかの検証を目指している。うまくいけば、放たれるオスの蚊は、成虫になる前に死んでしまう遺伝子を子孫に伝えるので、蚊の数が激減するはずだ。
米国食品医薬品局(FDA)は実験を承認済みだが、11月初めの住民投票で、地元の意見が分かれた。フロリダの蚊対策を担当する当局は、実験の実行を決定しているが、最終的な実験場所は未定だ。
一方、ニューヨーク・タイムズ紙によると、ウイルスに効果のあるワクチンの探究も続いている。米国国立衛生研究所(NIH)などの多数の学者や研究者はもちろん、現在12社以上がワクチンを開発中だ。
研究者は、ワクチンの実現可能性を確信している。「思い上がった気持ちなしに、この分野にいる私たちのほとんどは、ジカ熱のワクチンを開発できると感じています」と、NIHの国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・S・フォーチ所長は、タイムズ紙に語った。実際、臨床試験はすでに始まっている。
ただし、効果のあるワクチンの発見にどれだけ時間がかかるのかは誰にもわからない。WHOは明らかにある程度時間がかかると考え、長期的に取り組もうとしている。
(関連記事:Science, Stat, New York Times, “Zika Attacked an Unborn Baby’s Brain as Doctors Watched,” “フロリダ州住民投票、遺伝子組み換え蚊の放出で賛否分かれる,” “連邦政府のジカ熱対策 DNAワクチンを試験投与”)
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クレジット | Photograph by Victor Moriyama | Getty |
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。