トンネルの天井などに沿って、車を逆さまにして走行できるかという問題は、何十年もの間エンジニアや運転愛好家を魅了してきた。逆さ走行は、特定の状況下では確かに可能であり、これに関係するさまざまな力を分析した研究も多い。実際、学生向けの演習問題としてこういった場合の力の計算が出題されることもしばしばだ。
そのため、この問題はすでに徹底的に検討し尽くされており、これまでに考えられてきた以外の逆さ走行の方法は存在しないだろうと考えられがちだ。しかし、実際はそうでもない。
5月24日、ブラジルのサンタカタリーナ連邦大学のフェルナンド・ダルアニョール教授らは、この問題に対するまったく新しいアプローチを発見した。ダルアニョール教授らは「この解決法は、数学的には複雑ではありませんが、これまで、文献はもとより、映画、ゲームにすらも出てきたことはありません」と述べている。
彼らのアプローチは、これまでの解決法に比べていくつかの重要な利点がある。研究チームは、「スタントカーを円形のトラック(走路)上で、ほんの一瞬ではなく、ずっと逆さのまま走らせる方法があります」と言い、おもちゃの車を使って実演すらしてみせた。
背景を少し紹介しておこう。逆さ走行のひとつの方法は、動的空気力を使うものだ。たとえば、F1(フォーミュラ・ワン)カーの前翼と後翼は、車体を道路に押し付ける力を発生させる。それらの翼を備えた高性能自動車であれば、時速約225キロ前後という比較的低い速度で、トンネルの天井を逆さになって走行できることが容易に計算できる(ただし、そのような条件でエンジンが作動するかについては別の問題だ)。
車を道路に押し付けられる他の力として、遠心力がある。これまで、大勢の勇敢な人々の運転する車が、宙返りループのトラック上で一瞬逆さになってもそのまま走行できるのは遠心力のおかげだ。
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