米国の気候政策にとって、気候変動の否定論者であるドナルド・トランプ共和党候補の勝利は、今月起きた最初の大きな痛手のひとつだ。もうひとつの痛手は、ワシントン州の「イニシアチブ732」が大差で否決されたことだ。炭素税は、温室効果ガス排出量を削減する最も効果的なメカニズムだと経済学者は考えており、二酸化炭素の排出に課税することで既存の税を軽減し、炭素税に共和・民主両党からの支持が得られることを証明するはずだった。
ワシントン州が炭素税法案を59対41で否決したのとは対照的に、世界最長の国境線の向こう側にあるカナダで、炭素税は政治的に幅広い支持を集めている。2017年にはカナダ人口の5分の4が居住する州で炭素税制度が実現し、2018年には全てのカナダ人が炭素税を払うことになりそうだ。
ワシントン州で否決された政策も、カナダで順潮に進む炭素価格制度も、ブリティッシュコロンビア州(カナダ)で2008年に導入された北米初の炭素税が起源であることは同じだ。ブリティッシュコロンビア州では、州内で消費される化石燃料に対して、二酸化炭素1トン当たり10カナダドル(7.40米ドル)が課税され、その後2012年までにトン当たり30カナダドルに増税された。ブリティッシュコロンビア州の炭素税は税収中立(増税分と減税分が等しいこと)で、炭素税による歳入は法人・個人の所得税減税に使われた。
多くの学術研究によって、ブリティッシュコロンビア州の炭素税は経済成長を阻害せず、二酸化炭素排出量を5~15%削減し、低所得家庭への影響を打ち消す特別減税が成功したとわかっている。オタワ大学のニコラス・リバーズ准教授(エネルギー経済モデリング)は「この税は高度に累進的です」という。
ワシントン州の炭素税も同様に、来年からトン当たり15ドル(たとえばガソリン3.8リットル当たり約15セント)の課税で始め、2018年までに25ドルに増やし、その後は毎年3.5%にインフレ分を加味して、トン当たり100ドルになるまで増税するはずだった。また、税収は既存の税の減税と低所得家庭への税 …