KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
200万ドルの「世界一高い」遺伝子治療薬が認可、保険市場に混乱
Novartis
生物工学/医療 無料会員限定
Gene therapy may have its first blockbuster

200万ドルの「世界一高い」遺伝子治療薬が認可、保険市場に混乱

脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子療法の治療薬「ゾルゲンスマ」が米国食品医薬品局(FDA)に承認された。200万ドルという高額な遺伝子療法は、保険市場に混乱を引き起こす恐れがある。 by Antonio Regalado2019.05.27

新生児期に診断される不治の病。それが間もなく、生後数週間以内に受ける1回の遺伝子置換療法で治る病気になるかもしれない。

その治療費は知らない方がいいだろう。

遺伝子療法が1つの節目を達成しようとしている。大手製薬会社のノバルティスは明日にも、初の「大ヒット商品」となる遺伝子置換療法の認可を受ける。この大ヒット商品は、年間売上高が10億ドルを超える見込みだ。

「ゾルゲンスマ(Zolgensma)」というこの遺伝子療法は、1型脊髄性筋萎縮症(SMA)を持って生まれた子どもを治療する。1型脊髄性筋萎縮症は、発症した子どもの多くが2歳になるまでに亡くなってしまう神経変性疾患だ。ただ、ゾルゲンスマの予想薬価は150万~200万ドルという衝撃的な薬価となっており、史上もっとも高価な1回投与の治療薬となる可能性がある。

ノバルティスは、米国食品医薬品局(FDA)から最終認可を受け次第、この治療法の薬価を発表する(日本版注:FDAの認可を受け、同社は薬価を212万ドルと発表した)。同社は今週中にもFDAの認可が下りると期待している。

遺伝子療法はウイルスを用いて患者の細胞に正常な遺伝子を導入する治療法だ。遺伝子療法がますます成功を収めることで、米国の医療は再計算が必要になるかもしれない。

FDAは2025年までに10から20の遺伝子療法または幹細胞治療が市場に毎年参入すると予想している。血友病や筋ジストロフィーの高価な治療が認可された場合、米国の保険市場を混乱させる可能性がある。

「こういった医薬品の多くに関する問題点は、その高い薬価だけではなく、それを必要とする人の人生を一変させるような治療法だということにもあります」。保険会社ハーバード・ピルグリム・ヘルスケア(Harvard Pilgrim Health Care)の最高医療責任者(CMO)であり、ノバルティスと交渉をしてきたマイケル・シャーマンは述べる。「今回のような治療法や他の遺伝子療法が登場する際に、はねつけるのではなく、いかに保険システムを破綻させることなく受け入れられるかが問題になります」。

ノバルティス幹部によると、同社はこのSMA治療薬を市場に出す際、保険業者の支払いを支援するプログラムも提供するという。プロトタイプの「都度払い」プラン、および患者が亡くなった場合や、最終的に人 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
  1. AI’s search for more energy is growing more urgent 生成AIの隠れた代償、激増するデータセンターの環境負荷
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る