1826年、フランスの美食家ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランが著した「美味礼賛」は、「ふだん何を食べているのか言ってごらんなさい。あなたがどんな人だか言ってみせましょう」という有名な格言を生んだ。後に、「人は何を食べるかによって決まる」とも言われるようになる。
このような状況で食べ物は重要な鍵を握っている。研究者たちが躍起になって、人々の食習慣や、食習慣と健康との関係を知ろうとしているのはそのためだ。
しかし、人々の食習慣をひも解くのは驚くほど難しい。この分野の研究のほとんどは、比較的小規模な調査に基づいている。ネットユーザーたちが何を食べているか推測しようとした研究者たちもいる。だが、ネットを使った調査では偏りすぎていて、食習慣を正しく把握することはできないとの批判もある。
したがって、食習慣とその健康への影響を研究する良い方法が切実に求められてきた。
英国ケンブリッジにあるノキア・ベル研究所のルカ・マリア・アイエロ博士らの研究チームは、スーパーの売上記録から掘り起こしたデータを使って人々の食生活を調べ、地域の住民の健康状態と比較した。健康状態は、その地域で出された薬の処方箋から判断した。
アイエロ博士らのアプローチで特筆すべき点は、調査規模の大きさである。使われた売上記録は、英国最大のスーパーマーケット・チェーン「テスコ(Tesco)」のもの。同社のデータベースには、2015年にロンドンの店舗で人々が購入したすべての食品が記録されている。
医療データは …