遺伝子操作作物に対しては、遺伝子を操作しても収穫量(作付面積あたりのトウモロコシや小麦の収穫量)の増加にあまり貢献していないという批判がある。
しかし、タバコの光合成プロセスをテーマに研究している科学者が今回成し遂げたのは、まさにその「収穫量の増加」だ。科学者は、従前より20%大きく、長く伸び、巨大な葉と太い根を持つ、新種のタバコを生み出したという。
この研究は光合成の基礎効率を大幅に向上させることに初めて成功したと、ガーディアン紙は伝えている。国連は今後20年間で食糧需要が70%増加すると予想しているが、この手法で作物を改良すれば、そうした需要に応えられるかもしれない。
植物は光合成で日光と二酸化炭素をエネルギーと炭水化物に変換する。しかし眩しい日差しのもとでは、余分な光子を放出する性質がある。
日が陰ってくると植物は再び光合成の準備を始めるが、このプロセスはゆっくりとしか進まない。科学者はここに目をつけて、光合成の効率を上げるために、スイッチの切り替えを制御する遺伝子の複製を追加した。この遺伝子により「光合成復帰時間(photosynthetic recovery time)」の過程を縮めて、植物がより効率的に日光で光合成できるようにした。
研究チームはすでに米とトウモロコシに遺伝子を組み込んだとサイエンス誌は伝えており、日照状況に応じた植物の反応をさらに素早くする方法が見つかる可能性もあるという。
「この手法が他の植物にも応用できるかどうか、確かなことはわかりません。しかし私たちの研究テーマである光合成は、すべての植物に共通した働きですから、きっと応用可能だろうと確信しています」とプロジェクトを率いたイリノイ大学のスティーブン・ロング研究員は、ガーディアン紙の取材に答えた。
イリノイ州の実験区画で育てられた急速成長作物は3週間で従来の品種に比べ14~20%ほど大型に成長した。これだけでもかなり大幅な生産量の増加がもたらされる。米国の農家がトウモロコシの収量を増やそうとさまざまな方法を試し、年にたったの2%ずつ、地道に生産量を増やしてきたのとは対照的だ。
ロング研究員はニューヨーク・タイムズ紙 の取材に対し、遺伝子工学と第二の「緑の革命」(前世紀に現代的農業技術が途上国にもたらした食物生産性の向上)を生み出すテクノロジーによって「最終的には50%、もしくはそれ以上の収量増加が見込める」と思うという。
カリフォルニア州バークレー、カリフォルニア大学のクリシュナ・ニョギ博士との共同研究には、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が資金を提供した。
C4ライス・コンソーシアムと呼ばれる別の研究チームも、少量の水と肥料で従来に比べ50%多い収穫を得られ米と小麦の開発を目指して、光合成機能の改良に取り組んでいる。
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