トランプ新政権に関して「動画サービスの将来にどう影響があるのか?」と疑問に思うことはまずないだろう。
米国民は、商用インターネットの規制に関するドナルド・トランプの立場についてほとんど知らない。しかし、選挙期間中、トランプは規則の見直しについてさまざまな約束をしてきた。そのため、オバマ政権によるネットワーク中立性のルールは、まな板に載った鯉も同然に見える。もし、そうなれれば、仮にヒラリー・クリントンが大統領選で勝利していたら絶対に起きなかった新しい取引や製品、サービスが登場するだろう。
昨年、米国連邦通信委員会(FCC)のトム・ウィーラー委員長が議会を通したオープン・インターネット・オーダーは、インターネットサービス市場における競争とイノベーションの促進を目的にしている。インターネットサービス事業者(ISP)が、違法性のないトラフィックをブロックしたり、逆に優先したりすること、また、特定企業のトラフィックの優先度を有料で高める取引契約を禁じている。また、消費者や健全な競争に不利益をもたらしうる活動に関する監督権限をFCCに与えている。
しかし、オープン・インターネット・オーダーの制定にあたって、FCCのやり方は議論を呼び、共和党は、政府による過干渉だと反発した。委員会は、規制対象となるブロードバンドの分類を「情報サービス」から「テレコミュニケーションサービス」に変更し、(航空会社やトラック、電話会社等、荷物や人を運ぶサービス提供者と同様に)いわゆる一般通信事業者を統制する、より厳格な法律の下でISPを規制する権限を与えたのだ。
情報技術・イノベーション財団のテレコミュニケーション政策アナリストのダグ・ブレイクは、共和党政権は、この動きを元に戻そうとするだろう、という。またブレイクは、それはやがて、たとえば、トランプ政権下のFCCとネットワーク中立性の支持者の主張の間のどこかで、なんらかの形の妥協策に置き換わるだろうが、それを言うのはまだ早い、という。
両者の意見の間で揺れ動くビジネスに「ゼロ・レーティング」がある。ゼロ・レーティングとは、加入者の毎月のデータ通信使用量から特定のサービスのデータ通信使用量を免除する特約のことだ。サービスとして人気があるT-モバイルの「Binge On」プランは、加入者がESPNやYouTube、ネットフリックス等のサービスで使った動画配信への課金を免除する。AT&Tは(子会社である)DirectTVの加入者に、データ通信使用量の上限にかかわらず、無線ネットワーク上でストリーミング配信を利用することを認めている。
オープン・インターネット・オーダーは、ゼロ・レーティングを明確には禁止していない。しかし、FCCはゼロ・レーティングについて、個別に検討する可能性がある。先週FCCはAT&Tに対して、自社サービスであるDirecTVにゼロ・レーティングを適用していることがネットワーク中立性のルールを犯している可能性があると通知した。AT&Tは、今月末までに回答する義務がある。
FCCが、今からトランプ就任までの間に何らかの行動に移すかは不明だ。また、FCCの通知が、AT&Tが来月リリース予定の「DirecTV Now」(加入者が100チャネル分の動画ストリーミングを利用できる月額35ドルのプラン)に言及しているかどうかも不明だ。
しかし、トランプ政権が始動すれば、AT&Tは規制を免れる可能性がある。ブレイクは、共和党政権では、このようなサービスが後押しされる傾向が強い、という。