大統領選挙中に民主党全国委員会のメールサーバーがハッキングされ、メールの内容がウィキリークスによって発表された。今となっては、米国国家情報局のマイケル・S・ロジャーズ局長が明確に述べたことに疑いの余地はない。今回のハッキングは選挙に干渉するための他国による計画的な試みであり、憂慮すべき事態として真剣に対処しなければならない。
ロジャーズ局長は直接ロシアとは名指ししなかった。しかしQuartzが指摘するように、米国の複数の情報機関が以前発表した共同声明で、ロシアとハッキングの関係はすでに示されている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙主催のカンファレンスでロジャーズ局長が発言した内容は、ここに全文再掲するだけの価値があるだろう。
「誰も疑念を抱いていないでしょう。ハッキングは遊びでも偶然でも、たまたま民主党全国委員会が狙われたのでもありません。他国が特定の効果を狙って攻撃してきたのです」
フェイスブックで拡散した虚偽ニュースによる混乱と、ドナルド・トランプに対する広範な懸念の声にかき消され、流出した民主党のメールの何通かが徐々に公開されたことで、選挙直前の雰囲気の大部分が形成されたとことは忘れられてしまっている。フェイスブックの過ちに比べると、流出したメールはフェイスブックのように簡単に人々が問題を指摘できることではない。しかし、メールの流出はフェイスブックの問題よりずっと恐ろしいことだ。ロジャーズ局長が指摘しているとおり、メールの流出問題は選挙結果を歪ませるための外国勢力による意図的な策略だったのだ。
メールの流出問題が今回の選挙に与えた影響が比較的わずかであっても、外国による選挙干渉は、今後も発生しうる心配がある。セキュリティ専門家のブルース・シュナイアーはワシントンポスト紙にこう書いている。「外国政府がアメリカの選挙に何の罰も受けずに影響を及ぼせれば、今後も操作されることへの『ドア』が開かれるかもしれない。その操作には、我々が目にした今回の出来事のように文書が盗難されて公開されるものや、我々の気づかないより微妙な操作の両方が含まれるだろう」
高度な暗号の使用やセキュリティの強化以外に、米国がこの問題にどう対処すべきかは不明だ。ジョー・バイデン副大統領は「最大の効果がある対抗手段を選ぶときは、それがメッセージとなるように」米国は報復すべきだと話している。ドナルド・トランプ次期大統領はサイバー政策について具体的な計画を明らかにしていない。しかし、トランプ次期大統領は「サイバー戦争に関しては、非常に、非常に厳しい態度で」臨みたいと宣言している。
解決策が見つかるまで、米国の政治過程は、米国が制御していない状態にあるのだ。
(関連記事:Wall Street Journal, Quartz, “民主主義国にぜい弱性 選挙制度にハッキング危機,” “The Internet Is No Place for Elections”)