トランプ支持者にも変化あり
米国の「保守」が
気候変動を認め始めた理由
これまで地球温暖化に対して懐疑的な姿勢を貫いてきた米国保守派が、一転して、気候変動問題を認め始めている。保守系の非営利団体シンクタンクに気候変動対策のアプローチについて考えを聞いた。 by James Temple2019.06.11
気候変動問題が重要な節目を迎えている。
結果から原因を解き明かすのは難しいが、トランプ大統領に対する反発、環境災害の悪化、若者主導の抗議行動、そして極めて野心的な内容のグリーン・ニューディールなどの要素が絡み合い、気候変動問題が一躍注目を集めている。
広範囲にわたる経済的・環境的正義の提案が、優れた政策なのか政治ゲームなのかについての論争は続いている。しかし、気候変動問題への対応を要求する多くの中道派に加えて、保守派団体でさえも、ここにきて「オーバートンの窓」(現時点の一般世論に受け入れられる思想や政策領域の広さを示す相対的概念)のシフトを感じている。米ワシントンD.C.を拠点とするシンクタンクのクリアパス(ClearPath)などの団体は、カーボンフリー・エネルギー政策を推進するチャンスだと捉えている。それほど斬新な政策ではないかもしれないが、より広い支持を獲得できるだろう。クリアパスの見積もりでは、気候変動リスクに対し、より効果的な対応が可能だとしている。
クリアパスのリッチ・パウエルED(最高経営責任者)は、米国が果たすべきもっとも重要な役割は、問題を悪化させる既存の選択肢よりも安価で優れたカーボンフリー・エネルギーのツールを開発することにあるという。
2015年に発足した非営利団体クリアパスは、政府は最先端原子力、送電網エネルギー貯蔵、化石燃料プラントでの二酸化炭素回収システムなど、エネルギー分野のテクノロジーの進歩につながる初期研究に重点を置いた投資をする必要があると主張する。ある程度の支援体制を整えて新しいテクノロジーの市場参入を助け、その後は自由にさせるべきだとしている。
クリアパスが主張するこのアプローチで、高まり続ける気候リスクに間に合うようにテクノロジーの進歩を加速できるかはどうかは明らかではない。しかし、パウエルEDはMITテクノロジーレビューのインタビューで、このアプローチが地球規模でもっとも有望であると考える理由、世間が認識しているよりも多くの共和党員が気候変動問題を認識し始めている理由(複数のレポートが裏付けているようだ)、そして何十年にもわたって気候変動を否定してきたことについて共和党からの謝罪を期待すべきでない理由を説明する。
※本インタビューは文章の長さを調整し、意図を明確に伝えるため編集している。
——気候変動に対するクリアパスの見解を教えてください。
発展途上国に対して安さよりもクリーンさを優先するよう求めることが現実的ではなく、率直に言ってそれが少し不公平だとすると、クリーンエネルギーの開発と経済発展をどのように融合させるかが課題となります。クリーンな資源を選択することが、地球温暖化ガス排出量の高い資源を選択する場合と同じくらい費用効果が高く、高い業績を達成できる選択になるのはどうすればよいでしょうか?それはテクノロジーの問題です。
クリアパスの見解では、最優先の課題はイノベーションへの挑戦であり、気候変動に対処するために存在する政治的資本をそちらにできるだけ多く回すことです。さらに、米国がその新しいテクノロジーの実験台になることです。
——初期段階の研究向けに、より大規模でより焦点を絞った政府研究開発資金の調達から着手するということですか?
政府は、エネルギー分野のテクノ …
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