人食いザメより危険な自撮り事故は、機械学習で防げるか?
自撮り中の死亡者が世界中で増えている。自撮り死しやすい場所の写真を機械学習させることで、自撮り死を警告するシステムが作れるかもしれない。 by Emerging Technology from the arXiv2016.11.16
「自撮り(セルフィー)」は、21世紀初頭にフロントカメラ搭載スマホが発売されて以来、大流行中だ。人気は爆発的で、昨年、Googleフォトにアップロードされた自撮りは240億枚に達した。
しかし、自撮りの流行には悲劇が伴う。2014年には自撮り中の15人が亡くなり、2015年には39人が亡くなった。今年8月までに、すでに73人が亡くなっており、自撮りにより死亡者はサメに襲われて亡くなる人よりも多い。
この傾向から興味深い疑問が浮かぶ。何が原因で自撮りが死を招くのか? 自撮りによる死亡事故は防げないのだろうか?
11月15日、この疑問に対して、ある種の回答が得られた。カーネギーメロン大学(米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)のヘマンク・ランバ研究員のチームが、自撮りの性質を研究し、事故につながる自撮りを事前に警告する方法を発見する、難題に挑戦したおかげだ。
研究チームはまず、世界中の新聞記事を収集し、自撮り事故死のデータセットを作成した。「自撮り事故死」は「個人(または複数)が自撮りをしなければ避けられたはずの本人またはグループの死亡」と定義した。
記事の信頼性を確保するため、アレクサの世界ランキングトップ5000または国別トップ1000にランキングされたニュースサイトだけを検証対象にした。「私たちが収集できた最初の自撮り死亡事故の記事は2014年3月です」と研究チームはいう。
この方法で、研究チームは127件の自撮り死亡事故を発見した。その後、各記事を精査して発生場所、死因、死亡人数を割り出した。
こうして自撮り死亡事故の実態を示す小規模データベースが作成した。まずわかったことは、自撮り事故死の半数以上にあたる76人は、インドで発生しており、他国と比べて群を抜いて多い。続いて死亡人数が多いのは、パキスタンの9人、米国の8人、ロシアの6人である。
研究チームはまた、最大の死因は高い場所からの落下であることを突き止めた。自撮りをしたがる人は、崖っぷちや高層建築物の頂上などを選ぶ傾向があることを反映している。
水も多く死亡事故の主因だ。高い場所から海に飛び込むなど、かなり多くの死亡事故が水場と高所に関連している。
インドでは自撮り事故死に鉄道が大きく関わっている点は興味深い。「この傾向は、線路上や線路脇で親友とポーズをとるのが、ロマンチックまたは永遠の友情を表すものと考えられていることに関係します」と研究チームはいう。
もうひとつの特徴は、米国とロシアでは銃が自撮り事故死の原因の大きな割合を占めていることだ。「銃を自由に所持できる両国の法制度がもたらす結果かもしれません」と研究チームはいう。
研究チームは、原因の調査後、自撮りの危険性を示す兆候を特定しようとした。研究チームの目標は、自撮り事故死の発生現場の周辺または他の場所でも、自撮り行為に危険性がある場合に警告を出すアプリの作成だ。
作成した自撮り事故死のデータセットでパターンを調査後、そのパターンを機械学習アルゴリズムに学習させ、ツイッターからダウンロードした他の自撮り写真に同様のパターンを発見させた。たとえば、近隣の高い場所や線路脇で撮影された自撮り写真は、危険性を示している可能性がある。
さらに研究チームは、ツイッターに投稿された3000枚以上の自撮り写真を機械学習アルゴリズムに投入し、自撮り写真に危険な行為が含まれているか判断させるテストもした。研究チームによれば、その精度は70%以上だった。
研究チームが実際に自撮り死亡の警告システムを構築するには、まだしばらく時間がかかるはずだ。 しかし、研究チームの目標には意義がある。世界中で自撮り事故死が最も多いインドでは特に意義が大きい。インドではなぜ自撮り死亡事故が多いのかの理由を調べるだけでも価値があるだろう。
インドの自撮り文化が他国と比べてはるかに危険な原因は何だろうか? 研究チームが今後調査することかもしれない。
参照:arxiv.org/abs/1611.01911: 自撮りで事故り死: 自撮り事故死の特徴と防止
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