スタバも注目、奇跡が生んだ
「気候変動に強い」コーヒー
世界的な需要の高まりに反して、コーヒーの栽培に適した世界の面積は2050年までにおよそ半減すると予測されている。偶然から見つかった新種がコーヒーの未来を救うかもしれない。 by Diego Arguedas Ortiz2019.05.23
ウィリアム・ソラノが手にする丸いプラスチック容器に入っているのは、未来のコーヒー・ブレンドだ。それは、新種のマキアートでなければ、専門店に並ぶミディアム・ローストの豆でもない。気候変動にも耐えられる可能性がある、新しい ハイブリッド種(一代交配種)のコーヒーだ。
「これはセントロアメリカーノ(Centroamericano)と呼ばれています」。コスタリカにある国際機関「熱帯農業研究高等教育センター (CATIE:Tropical Agricultural Research and Higher Education Center)」でコーヒーの育種に取り組むソラノ研究員は、数十の小さなポップコーンのような見た目の植物の胚が入ったシャーレを見せながら言った。ソラノ研究員らは、遺伝的に離れた相補的な2種類のコーヒーを掛け合わせることで、それぞれの親から最高の形質を引き継ぐハイブリッド種を作りたいと考えている。
セントロアメリカーノは、気候変動を念頭に置いて作られた種ではない。もともとは耐病性 、収穫量、味の向上を狙ったものであり、それらの点でセントロアメリカーノは成功を収めていた。高品質な飲料の原料となるコーヒー豆を、1ヘクタールあたり平均で20%以上収穫でき、伝染病として非常に恐れられているコーヒー葉さび病に対する高い耐性を示していたからだ。しかしその冬、驚くべき特徴が明るみに出た。2017年2月6日の夜、数十種類のコーヒをテストしていたラオスの試験場の気温が急激に下がったことで、試験区画のほとんどのコーヒー木が霜で黒くなってしまい、大打撃を受けた。朝7時までにはほとんどのコーヒー木が絶滅した中、生き残ったのが、セントロアメリカーノと、中央アメリカ産の他の2つのハイブリッド種だった。
科学者は気候変動のもたらす異常気象に対し、このようなハイブリッド種がより優れている可能性に気付き始めている。2015年の国際熱帯農業センター (CIAT)のクリスチャン・バン博士らによる研究では、コーヒーの需要の増加にも関わらず、その栽培に適した面積は2050年までに世界で約50%減少すると見積もっている。「気 …
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