スマホで自宅で尿検査、
受検率アップで医療費も削減
スマホカメラを利用して自宅で尿検査を実施できるシステムが英国で初めて商用展開され、その結果が発表された。これまで検査を受けなかった人々の多くが受検し、医療費の削減が見込めることがわかったという。 by Matthew Kalman2019.05.14
妊婦や腎不全のリスクを抱える患者、そして尿路感染症が疑われる人を対象に、毎年何百万件もの尿検査が実施されている。検査は、患者と医師の両者にとって高額で時間がかかるうえ、医療機関への訪問や検査機関への照会などで結果が出るまで最長で3日間も待たなくてはならない。
この不便さは、人々に年1回の受検を思いとどまらせている。検査を受ければ腎不全の初期兆候を検出し、透析や腎臓移植を受けずに済むかもしれない。現在英国では、年1回の尿検査受検の案内に応じているのは、リスクのある患者のうちわずか40%にすぎない。米国の受診率はさらに低く、約30%である。
一般的なスマホのカメラを検査機関レベルの性能のスキャン・デバイスに変換するシステムの初の商用展開が、こうした状況を改善できるかもしれない。イスラエルのテル・アビブを拠点とする「ヘルシー・ドット・アイオー(Healthy.io)」が開発した家庭向け尿検査キット「ディップ・ドット・アイオー(Dip.io)」を利用すると、腎不全に至る前に病気を検出することで、年間数百万ドルの医療費を節約できる可能性がある。さらに、即時に分析できるこのキットなら、妊婦や尿路感染症の患者の時間を節約し、不快感も軽減できるはずだ。人々が医師の受診予約を取る必要もなくなる。ディップ・ドット・アイオーは、スマホをベースとするシステムとしては初めて、米国食品医薬品局(FDA)からクラスⅡの医療診断機器として承認された。
検査を後押しする
英国国民保険サービス(NHS)は4月24日、英国イングランド北東部のキングストン・アポン・ハル地区の糖尿病患者2000人以上を対象に、ディップ・ドット・アイオーを初めて商用展開した結果を発表した。同発表によると、これまで検査の案内を受け取っても医療機関を受診しなかった患者の72%が、ディップ・ドット・アイオーによる検査を実施したという。このうち10%の患者に尿蛋白濃度の上昇がみられた。 尿に含まれるタンパク質の増加は慢性腎疾患の初期兆候であり、発見が遅れれば、およそ5年で透析あるいは腎臓移植が必要になることもある。
ディップ・ドット・アイオーは、スマホについている普通のカメラと、疾患、感染、妊娠関連の合併症などの10種類の指標を識別できる尿検査用試験紙を使用する。患者は試験紙と色見本との比較写真をスマホのカメラで撮影する。すると、機械学習を利用したアプリが、カメラの機種や照明の状態など多数の可変要素(患者が試験紙を尿に浸す時間が推奨されている2秒間よりも長かったか否かも含む)を …
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