アリババグループは、2009年以来、毎年11月11日に開催されているシングル・デイ(独身の日)の24時間、電子機器や衣類、化粧品の販売キャンペーン「2016 11.11 Global Shopping Festival」を開催した。買い物客は、イーベイ風のショッピングプラットフォームで、セール開始の数週間前から予約注文し、当日深夜に始まるセールを心待ちにする。先週金曜日に開催された今年の売上額は、過去最高を更新する1207億元(約180億ドル)で、2015年から32%上昇、新記録を樹立した。
だが、この大きな売上高には、予測できない返品や配送面での問題を増やす恐れがある。また、eコマースの消費者は、偽造品等の問題に直面することが多く、配達された商品がWebページで見た商品が違っているかもしれないと心配している。
そこで、オンライン販売業者と買い物客との信頼関係の溝を埋める新産業として生まれたのが買い物保険だ。保険料は数円から数百円で、オンラインショッピングで生じた損害を補うさまざまな契約があるが、おおむね返品や損傷した商品、アレルギーを発症する化粧品の返品時に補償してくれる内容だ。
保険の請求と同様、「予期しない商品が返品されることもあります。保険の原理で問題を削減することを考えたのです」とアリババグループ系の大手オンライン金融サービス企業アント・フィナンシャルのユエピン・リョウ保険部門担当役員はいう。リョウ役員によると、オンラインビジネスの小企業や零細事業は、買い物保険のアイデアを歓迎した。アリババグループが運営するeコマースサイトTmall.comでは、400万件以上の販売者が、顧客に買い物保険を提供した。
業界全体のデータは入手できなかったが、3億人以上のユーザーが、アント・フィナンシャルが紹介した9社の保険会社から異なる種類の保険を購入した。アント・フィナンシャルのプラットフォームで扱っている消費者用の保険商品の数は、急速に増加している。
売上額を急増させ、顧客との信頼を構築するため、今年のセール日は多くのオンライン販売業者が無料で買い物保険を提供した。
消費者も無料を歓迎している。「保険があると安心できます」と国有保険会社の生命保険部門に勤務するシュアン・シャオ(27)はいう。シャオは、シングル・デイの一週間前に、一足の靴をTmall.comの欲しい物リストに保存した。11月11日0時に注文し、販売者が提供していた無料の買い物保険を選択した。商品到着後に返品したければ、保険会社から12元(約1.8ドル)が支払われ、返送料金が補填される。
シャオは、売り主が保険を提供していなくても、自分で5元(約80円)の保険に加入していたという。商品価格が大幅に割引されており、靴の品質がわからなかったからだ。5元の保険料のお陰で、セール商品を購入できた。
シャオ自身が販売する生命保険の加入者は大体40代以上だが、買い物保険を購入する人は自分と同世代が多い、という。常にWebで割引商品を探している若者で、そのせいで質の悪い商品を購入させられることもある。アント・フィナンシャルのプラットフォームで買い物をする3億人の買い物保険購入者の内、約2億人が31歳以下だ。
浙江大学インターネット金融学部のシェングリン・ベン学長は「中国特有の消費方法です。信頼が欠如する環境で、買い物保険は、消費者の懸念を払拭させます。オンラインで物を購入しても安全だとわかれば、もっと多くの人が買い物をするでしょう」という。
買い物保険をビジネスモデルに組み込み、保険商品へのアクセスを広げる方法にすることに問題はない。しかしベン学長は、買い物保険への依存に懸念を示す。中国の信用制度が改善されれば、この種の保険商品は要らなくなるはずだからだ。