研究者チームがその気になれば、将来の政治運動では、ツイッターボットで活動家が動員されるかもしれない。
マイクロソフトが最近発表した研究で詳細を記述した「ボッティビスト」(マイクロソフトの研究者が命名)は、複数アカウントが同時に稼働し、ラテンアメリカの政府の汚職についてツイートしたユーザーに、解決策を尋ねたり、連帯のメッセージをツイートしたりして、何かの行動を促した。
論文の共著者であるウエストバージニア大学のサイフ・サベージ助教授は「活動家が、多くの時間をかけずに、本当に簡単に、大勢の人々に働きかけ、人々を勧誘し、自身の活動に協力を得られるようにしたいのです」という。
ボッティビストは「汚職」や「刑事免責」といった言葉をツイートした人物に、さまざまな言い方で行動を起こすように促した。また、協調して行動しようと提案する内容を複数の人に同時にツイートすることで、ボランティアに参加しそうな人を組織化しようとした。
全体で、接触を試みたボットの45%に返信があった。「自分たちの住む場所でどうやって汚職に立ち向かえばいい?」など、活動に参加するよう直接求めたツイートへの返信率はこの実験で最高の81%だった。
研究者は、ツイートしているのが人間ではなくボットであることを明示することにして、ボットのツイッター名とプロフィール欄に「bot」を加えた。さらに、人間ではないと明示したボットがより人間ぽくツイートすると、ボランティア候補は否定的な反応を示し、協力を求めるツイートへの返信率はこの実験で最低の21%になった。
「実際、ボットがこの種の運動の立ち上げに関わるべきか、人々は疑問を感じるようになり、関わらなくなったのです」とサベージ助教授はいう。
この研究は、政治家によるボットの利用をある種のヒントにしている。メキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領は自身の政治運動の強化にツイッターボットの助けを借りた。2014年、メキシコで学生グループが失踪し、警察によって処刑された件を巡ってツイッターに不満が溢れた時、関連するハッシュタグのツイートはボットによる空のツイートでかき消されたのだ。そこで研究者は、ボットを悪用するのではなく、よい影響を持つ政治運動にどう活用できるかを見極めようと決めた。
研究チームはボットを最終的に現実世界で運用するつもりだ。メキシコで気候変動に関する活動や労働者の権利を主張しているPETA(People for the Ethical Treatment of Animals)は、研究チームの最初の提携先になる。サベージ助教授によれば、ウィキペディアですら、ボッティビストで新規の寄付者を見つけるかもしれない、という。
ボットのネットワークは、ボットが接触しなければ活動に関わりようがない潜在的ボランティアを探し出したり、人間が直接尋ねるには危険が伴う調査を匿名化するのに役立つかもしれない。サベージ助教授は、このプラットフォームを利用すれば、一般市民が自身の氏名を明かすリスクを冒さずに、(テロリスト同士の会話に自然に溶け込んで情報を収集するなどして)テロリズムを特定できるかもしれない、という。
ボッティビストが活動家を別の人に紹介すれば、ボランティアを組織化できる。研究の次の段階は、ボットとボランティアのやり取りに応じて、潜在的ボランティアに活動の運営を任せることだ。
「人々が活動に参加し、都市や全国規模で影響を与えるようになるには、実はちょっとした後押しが必要なだけなのかもしれません」とサベージ助教授はいう。