暗号通貨への「不明朗」課税は是正を、米議員グループが要請
暗号通貨に対してどう課税すべきか? 米国では「不明朗」な課税方針を改めるよう、超党派の議員グループが当局に要請中だ。 by Mike Orcutt2019.05.17
暗号通貨に対する米国の課税方針に誰もが困惑している。米国内国歳入庁(IRS)は今こそ課税方針を整理し、説明すべきだ。これが4月11日、下院議員21名からなる超党派グループがにIRSに対して送った手厳しい書簡の主旨である。
2014年に発表したガイダンス(通知)を更新するようIRSに求める政策提言者の声がますます高まる中、ミネソタ州選出のトム・エマー下院議員が率いる超党派グループがこうした声に加勢した。「暗号通貨に対する連邦課税には重大な問題が数多くありますが、曖昧なまま放置されています」。エマー下院議員らは、追加のガイダンスが「緊急に必要」と述べている。
もっとも重要な課題は、キャピタル・ゲインという概念に端を発する問題が未解決であることだ。キャピタル・ゲインとは、投資家が資産を売却した際に得る利益のことだ。IRSが5年前に発表したガイダンスでは、「暗号通貨」は連邦税務上の資産として扱われると記述されている。暗号通貨の購入と保持は課税対象ではない。しかし、暗号通貨を使って何かを購入した場合、それがコーヒー1杯のような少額のものであっても、最初に購入した時のその暗号通貨の価値と、使用した時の価値の差額を必ず記録しなくてはならない。最初に購入した時と使用した時で暗号通貨の価値が上昇していた場合、その差額はキャピタル・ゲインとみなされるので税金を支払う必要がある。
しかし、IRSはキャピタル・ゲインを計算する際に、暗号通貨の価値をどのように決定すべきかを正確には指定していない。ここに問題がある。多くのデジタル通貨が複数の取引所に上場しているので、価格が統一されていないからだ。エマー下院議員たちは、もっと具体的に指定するようにIRSに求めている。
超党派の議員グループはハード・フォークの問題も提起している。ハードフォークとは、ブロックチェーン・ネットワークが2つの別々のネットワークに分かれることを決定した際に発生するもので、それぞれのネットワークが独自のコインを保有するようになる。たとえば、ハード・フォークは、提案された技術的変更を巡ってそのネットワークを中心としたコミュニティが決裂することで起こる。これが、2017年にビットコイン(Bitcoin )のフォークとしてビットコイン・キャッシュ(Bitcoin Cash)が誕生した理由だ。
昨年、ビットコイン・キャッシュ自体も2つに別れた。チェーンが分かれた場合、元々のコインの保有者は、新たなコインを同じ価値だけ得ることができる。これは収入に該当するだろうか? どれだけ正確に課税されるのだろうか? 現段階で、この問題に対してIRSは新たなガイダンスをまだ発表していない。
エマー下院議員と書簡の共著者は「そのほかにも多くの未解決問題がある」ものの、暗号通貨のキャピタル・ゲインとハード・フォークに関する不明瞭さが特に喫緊の問題であると述べている。書簡では、こうした問題に対するガイダンスを追加するためのIRSの計画を5月15日までに文書で説明し回答するように求めている。この書簡は、4月15日の確定申告の締め切り日に必死で間に合わせようとしていた人々の助けにはならなかったが、暗号通貨利用者は、来年の確定申告シーズンには今回ほど頭を悩ませずに済むかもしれない。
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- マイク オルカット [Mike Orcutt]米国版 准編集者
- 暗号通貨とブロックチェーンを担当するMITテクノロジーレビューの准編集者です。週2回発行しているブロックチェーンに関する電子メール・ニュースレター「Chain Letter」を含め、「なぜブロックチェーン・テクノロジーが重要なのか? 」という疑問を中心に報道しています。