なぜ男性の避妊にはコンドームとパイプカットしかないのか?
男性避妊法の研究は失敗の多い分野だが、いくつかの有力候補が準備を着々と進めている。 by Emily Mullin2016.11.14
ここ数十年で女性は、ピルや避妊パッチ、避妊スポンジ、ペッサリー、避妊注射、避妊リング、子宮内避妊用具(IUD)など、多くの方法を選べるようになった。一方、男性が選べるのはコンドームとパイプカット(精管切除)だけだ。
原因は男性がさまざまな方法に前向きでないことではない。男性用避妊薬の研究開発はずっと不振が続いており、数多くの試みが途中で放棄され、未完成のままなのだ。研究者は男性用避妊薬が製品化するには主な課題が2つあるという。まず、女性の排卵は月に一度抑制すればよいが、男性は毎日数百万の精子を生産しており、抑制は生物学的にずっと複雑であることだ。もうひとつは、男性向けの避妊薬は臨床試験の予算が十分でないことだ。
ごく最近、世界保健機関(WHO)が以前支援した研究結果が10月に発表され、避妊薬を注射された男性が相手の女性の妊娠を効果的に阻止したことがわかった。だが、当該臨床試験は2011年に外部委員会の勧告により中止された。試験中に被験者1人が自殺、他の被験者にもうつ病の症状が出るなど、深刻な副作用が現れたのだ。
男性用避妊注射の研究報告書の共著者で、非営利の学術研究機関コンラッドのダグラス・コルヴァード副所長(プログラム担当)は、残念な結果だという。ホルモン剤(プロゲストゲンとテストステロンの混合物)の研究は、コンラッドもWHOも別の手法を再試験するほどの資金がなく、臨床試験段階から進むことはないだろう、とコルヴァード副所長はいう。
男性に、精子形成の抑制を目的にホルモンを投与する避妊法は、40年にわたって、男性用避妊薬でも広く研究されてきた形態だ。別のホルモン避妊薬が使われた1045人の中国人男性を対象にした有名な試験では、避妊の効果があり、しかも可逆的(投与をやめれば元に戻る)に精子の形成が抑制されることがわかった。だが、製造元の浙江仙琚製薬は、追 …
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