ドナルド・トランプ次期大統領が「地球温暖化は中国の作り話」と主張していることは周知の事実だ。
The concept of global warming was created by and for the Chinese in order to make U.S. manufacturing non-competitive.
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) November 6, 2012
ではトランプ次期大統領のエネルギー政策や気候政策は何だろうか?
トランプ次期大統領は気候変動に関するパリ協定からの脱退を主張してきた。また、連邦政府の気候変動関連予算を削減し、オバマ大統領が打ち出したクリーン・パワー・プランを廃止し、環境保護局(EPA)の解体も目指している。 残念ながら、この種の後ろ向きな政策や措置は実現の可能性がある。
石油王のハロルド・ハンやフォレスト・ルーカスは流出した閣僚候補者リストで、エネルギー省長官や内務省長官に名前が上がっている。それ自体は意外ではないが、大問題なのは、トランプ政権が化石燃料を最優先にすることだ。
エコノミスト誌は「米国のガスや石油、石炭の生産量がすぐに拡大する」のを目にすると書いた。水圧破砕法による石油採掘や新油田の増加、炭鉱産業の再活性化は実際に進むだろう。
ただし、オバマ政権のクリーン・パワー・プラン(裁判所は違憲でないとしている)など、気候問題に関する現行法の廃止は簡単ではないことにトランプ政権もそのうち気付くだろう。規制を変更するには、どんなに順調でも、特に統計等の資料に基づくのではなく、単に個人的な意見による場合は、長い時間がかかるものだ。
サイエンス誌はパリ協定について、トランプ政権は規定上2020年まで脱退できないと指摘している。しかしトランプ新大統領が、協定で合意した米国の削減目標を目指さないとあっさり決めてしまう可能性はある。また、トランプ政権が国内の景気だけを考えるなら、国連気候変動枠組条約そのものから脱退しかねない。脱退手続きは1年以内に完了する。
恐らく、米国以外の国が気にしているのは、気候変動問題への対処に米国が支出する協力金だ。オバマ政権は、年間8億ドルの資金提供を約束していた。米国議会は金額削減に同意せざるを得ないだろう。しかし、もしそうなれば、開発途上国は削減目標を達成できそうもない。
トランプ陣営の公約はいつか実現するかもしれない。しかし、政策をどうしようが、米気候研究機関「クライメート・セントラル」が残念そうに指摘するように、誰が選ばれても物理学の法則通り、地球の温暖化は進む。今後4年間、米国が気候変動を阻止する動きに加わる可能性は低い。
(関連記事:Science, The Economist, “Six Big Technology Questions for President Trump,” “The Paris Climate Pact Is in Effect, but It’s Not Enough”)