クラウド投資の未来
ICOは「詐欺」の汚名を
返上できるか?
2017年に始まった新規暗号通貨公開(ICO)ブームは、一夜にして何億ドルもの資金を調達できることを実証したが、米国証券取引委員会(SEC)の摘発によって終了した。だが、ブロックチェーンベースの「デジタル証券」によって合法的なICOを実現し、誰もが新しい企業や技術に投資できるようにしようとする動きが始まっている。 by Mike Orcutt2019.07.19
ただのクラウド・ファンディングではない。有望な抗がん剤開発資金を募るのだ。キックスターター(Kickstarter)のキャンペーンに似ているが、出資商品の思い出になるものや特別な使用権を得る代わりに、将来期待される医薬品の売上の分け前を得られる。いまなら、ブロックチェーン技術のおかげで、バイオテクノロジー企業のアジェナス(Agenus)に投資できるそうだ。あなたは投資してみたいだろうか?
すべてが計画通りに進めば、アジェナスがブロックチェーン・ベースの暗号資産を発行する最初のバイオテクノロジー企業となるだろう。アジェナスは、この暗号資産を「デジタル証券」と呼んでいる。アジェナスの2019年1月の発表によれば、この暗号資産は、現在治験中の「PD-1阻害剤」の「将来的な米国での売上高の一部」に相当するという。規制上の制約により、この暗号資産への投資は当初、裕福な投資家や金融機関に制限されるが、長期的にはできるだけ幅広い人々が投資できるようにするのが目標だ。
デジタル証券を利用するのは、バイオテクノロジー企業ではアジェナスが最初だが、同じような考えを持つ企業はほかにもある。ブロックチェーンを使うことで、すべての資産の発行と管理を、従来の金融機関より透明性を持たせたうえで、より安価かつ迅速に実施できるようにする。資金調達を民主化することが、こうした企業の狙いだ。理屈の上では、より幅広い企業やベンチャーが、より多くの潜在的な投資家とつながることができるはずだ。ブロックチェーンを活用したクラウド投資の理想的な未来では、発行体も投資家も勝ち組となるだろう。
すでに複数のベンチャーキャピタル企業が、ブロックチェーン・ベースの株式を発行している。不動産開発業者も、この動きに加わっている。2018年8月、投資家たちは、クラウド・ファンディング・サイトの「インディーゴーゴー(Indiegogo)による資金募集の際に、コロラド州の高級ホテルの不動産証券として1800万ドル相当の「アスペンコイン(Aspencoins)」を購入した。2018年11月、トークン発行プラットフォームのハーバー(Harbour)はサウスカロライナ大学の学生寮のデジタル株(2000万ドル相当)を売却した。芸術作品を証券化したトークン市場を作ろうとしている企業もある。
アジェナスは、新薬の開発・上市のための資金調達においてバイオテック企業がしばしば直面する、開発過程における高いリスクや費用の問題を解決しようとしている。同社が期待する「バイオテック電子証券トークン(BEST:Biotech Electronic Security Token)」と呼ぶ新しい暗号トークンは、投資家にとって伝統的なバイオテクノロジー企業の資金調達手段よりも説得力があるだろう。特に魅力的なのは、規制されたインターネット市場でBESTを取引できることだろう。その最初の市場が、いまや動き出そうとしている。この新しい手法は、「医薬品開発の資金調達に革命を起こす」可能性があると、アジェナスのガロ・アーメンCEO(最高経営責任者)は宣言している。
多くのブロックチェーン信奉者は、さらに大きな目標を掲げている。すべての投資市場に革命をもたらすだけでなく、新しい投資市場を創造するのだ。驚く前に、考えてみて欲しい。少なくとも、ブロックチェーンは、驚くべき資金調達ツールだと証明された。これは、2017年と2018年初頭の新規暗号通貨公開(ICO)ブームから得られる明らかな結論だ。多くのプロジェクトが当時、ブロックチェ …
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