電磁波の「最後の死角」 テラヘルツ波の可視化で新手法
赤外線とマイクロ波の間に位置するテラヘルツ帯の電磁波は、検出や可視化が困難だった。ドイツのミュンスター大学の研究者らは、テラヘルツ波で「見た」画像を、単一ピクセルを使用して作成する手法を開発した。 by Emerging Technology from the arXiv2019.06.07
現在、電磁波のほとんどすべての波長域において、電磁波を検出および記録できるアンテナが存在し、電波やマイクロ波、赤外線、可視光、X線などを使って可視化した独特な画像を作成できる。
しかし、電磁波のスペクトルには未開拓の領域が存在する。1ミリから0.3ミリメートルの波長を持つ、周波数が約1テラヘルツ(テラは10の12乗)の電磁波を検出するテクノロジーはまだ初期段階にある。この周波数帯の電磁波を検出するための装置は、かさばるうえに高価で、しかも低品質の画像しか作成できない。エンジニアたちはこの未開拓領域を「テラヘルツ・ギャップ」と呼んでいる。
テラヘルツ帯の電磁波を捕捉する優れた手法が強く求められている。特に宇宙を観測するための新たな「窓」として必要不可欠だ。
最近、ドイツのミュンスター大学のマーティン・バーガー教授たちの研究チームが、テラヘルツ帯の電磁波を利用しやすくする革新的なイメージング手法「圧縮センシング」について発表した。テラヘルツ波に圧縮センシング手法を適用することで、世界や宇宙の見え方が変わるかもしれない。
まず、基礎的な知識について少し解説しよう。テラヘルツ波は衣服を透過するが、皮膚や金属を透過しない。テラヘルツ波を検出できる特殊な目で人を見れば、裸に見え、携帯している鍵や硬貨が見える。ナイフや銃も見えるかもしれない。そのため、テラヘルツ波を利用したイメージングにはセキュリティへの幅広い応用の可能性がある。もちろん、プライバシーに配慮する必要があることは言うまでもない。
テラヘルツ波の検出が困難なのは、電磁波のスペクトル上でマイクロ波と赤外線の間にあるからだ。マイクロ波と赤外線は、検出方法が大きく異なっている。
マイクロ波は、必要な周波数(最大約300ギガヘルツ)で電荷が往復運動すると発生する。マイクロ波の検出には同じプロセスを逆方向に利用する。すなわち、電磁波によって生じる電荷の往復運動を検出する。
一方、赤外線は、適切な材料の電子を、2つの電子エネルギー準位間で遷移させることで生成する。遷移に必要なエネルギーが赤外線の光子のエネルギーと同等であるときに赤外線が発生する。これも同じプロセ …
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