米国で、ジカ熱やデング熱等の病気の感染を防ぐために遺伝子組み換え蚊を放つ試験は、フロリダ州の郡単位の投票で意見が割れ、失速しそうだ。
試験場所の島の街キー・ヘイブンでは、11月8日、住民投票で投票者の65%が試験承認を目指す法案を否認し、一方でキー・ヘイブンが属するモンロー郡では58%の住民が試験を支持した。
米国食品医薬品局(FDA)による認可を8月に受けた後、オクシテック(英国)はジカ熱やデング熱、チクングニア熱等のウイルスを媒介する蚊(ネッタイシマカ)の数を激減させるのに有効かどうかを研究するために、遺伝子組み換え蚊をモンロー郡で放つ計画を進めてきた。しかし地元で起きたテクノロジーに対する反対により、次の地方選挙で有権者の意思が明らかになるまで、フロリダキーズ蚊抑制地区委員会は試験の実行を延期することになる。
住民投票に法的拘束力はなく、地区委員会が11月19日の次回会合で試験開始を決めることもありうる。オキシテックのヘイデン・パリーCEOは、試験開始はあり得ると考えている。
「短期間でジカ熱から身を守れるテクノロジーを実現するために、予定通りキー・ヘイブンでの試験を開始したいです」とパリーCEOは11月9日の朝に語った。
パリーCEOは試験場所は限定されており、キー・ヘイブン以外に試験場所を移す場合には、オキシテックはFDAとの手続きをやり直さなければならないという。その場合、試験開始はさらに数カ月遅れる。FDAは8月の声明で、遺伝子組み換え蚊を放つことで、環境に重大な影響は出ないと断定した。
オキシテックの蚊は全てオスで、いわゆる「自己限定的な遺伝子」を持つように操作されている。蚊が自然に放たれてメスと交配すると子孫に遺伝子を残すが、子孫は成虫になる前に死ぬため、地域の蚊の数を激減させる。
オキシテックは今のところ、ケイマン諸島(ブラジル)やパナマをはじめ、5カ所で野外試験中で、遺伝子組み換え蚊が放たれた全ての場所で、蚊の数は90%減少したことが証明されている。フロリダキーズ蚊抑制地区は、2万5000人の住民のために、殺虫剤の散布活動等のネッタイシマカの抑制活動(この方法で地域の蚊の数を30〜50%減らせる)だけで毎年110万ドルを費やしている。フロリダ州でオキシテックの活動を率いるデリック・ニモは、オキシテックの手法にかかる値段も同じぐらいだろうという。
11月2日時点で、米国で報告された139件のジカ熱の国内感染は、全てフロリダ州で起きている。
オキシテックのテクノロジーは、米国等で蚊が媒介する病気の感染が突然広がるのを制御するために研究されてきたいくつかの手法のうちのひとつだ。非営利団体「デング熱撲滅」やグーグルも、斬新な蚊の抑制手法を開発している。