トーマス・エジソンはしばしば、米国でもっとも偉大な発明家と言われる。発電、録音、電球などは彼の発明の成功例の一部だ。
しかし、エジソンも失敗を経験しなかったわけではない。エジソンが商用電球の最初の成功を収めた炭素フィラメントに行き着く前に、1000もの異なる設計をテストしたのは有名な話である。この粘り強さこそが、彼が他の人々と一線を画している所以だ。「人生における失敗の多くは、何かをあきらめた時点で、それがどれほど成功に近かったかに気付かなかった人々によるものなのです」とエジソンは言っている。
多くの研究者やグループが、成功の本質について研究をしているが、得られている知見はまちまちだ。一方、失敗の本質についてはあまり研究されていないが、こちらの方がはるかに重要かもしれない。失敗の力学をつかさどる仕組みについて、我々はほとんど何も知らない。
イリノイ州エバンストンにあるノースウェスタン大学のイーアン・インと同僚らによる研究は、そうした状況を、少なくとも部分的に変えつつある。インらのチームは、研究資金の調達を試みた研究者たち、成功したスタートアップ企業、それにテロ組織を追跡した巨大な3つのデータセットから失敗の本質を分析することで、失敗の力学と、成功と失敗を分ける初期段階の兆候を明らかにする研究を実施している。
同チームが用いる手法は、3つのデータセットの分析に基づいている。1つ目のデータセットは、1985年から2015年の間に米国立衛生研究所(NIH)に提出された、健康に関するすべての研究提案だ。
NIHは生物医学的研究のための世界最大の資金源である。そのため、データセットの量は膨大で、13万9091人の研究者が提出した77万6721件の応募案件が含まれる。さらに、研究提案に対して資金が提供されたかどうか、すなわち、成功したかどうかの情報も含まれている。
2つ目のデータベースは、米国ベンチャーキャピタル協会(National Venture Capital Association)の公式データベースである「ベンチャーエキスパート(VentureXpert)」に含まれるスタートアップ企業に対する投資記録だ。この記録は、1970年から2017年の間にベンチャーキャピタリストが資金を提供したすべてのスタートアップの運命を追跡しており、25万3579人のイノベーターが関わる5万8111社の情報を網羅している。
ここでは、スタートアップ企業が創 …