「太陽嵐」の脅威に備えよ、 ESAが計画する宇宙天気観測ミッション
コネクティビティ

The space mission to buy us vital extra hours before a solar storm strikes 「太陽嵐」の脅威に備えよ、
ESAが計画する
宇宙天気観測ミッション

激しい太陽活動に伴って発生する荷電粒子や電磁波の「嵐」は、地球軌道上の人工衛星や地上の送電網などに大きな影響を及ぼす恐れがある。欧州宇宙機関(ESA)は、太陽嵐の地球への到達に対して早期に警報を出すべく、地球と太陽の5番目のラグランジュ点「L5」に観測機を打ち上げるミッションを計画している。 by Erin Winick2019.04.10

宇宙天気の歴史の中でもっともよく知られた事象は、おそらく「キャリントン・イベント(Carrington Event)」だろう。1859年に巨大な太陽嵐が地球を襲い、オーロラ(北極光)が、南はキューバでも観測されるほど大きな地球磁場の活動が起こった。電報職員は、機械から火花が散るのを目撃したと伝えられる。大したことではないように聞こえるかもしれないが、もしキャリントン・イベントのレベルの太陽嵐が今日起こったとしたら、都心部の電力が弱まり、GPSは使えなくなり、衛星通信が危機に陥る可能性がある。

このような嵐は100年や200年に一度の出来事かもしれない。しかし、起こった場合に備えて、どのようなものなのかを知っておく必要がある。

宇宙天気の分析では、このような危機的な事態(そして、より小規模でもっと頻繁に起こる太陽フレア)の発生について、太陽風、 コロナ質量放出 (太陽がコロナから突発的にプラズマの塊を放出して磁場を乱す現象)などの観測によって前触れを探す。オーロラの出現時刻の予測も可能だが、差し迫った危機的状況の予測のほうがより重要だ。

現在はわずか数日から数時間先までの警報しか出せない。主な理由は、太陽の全体像がよくわかっていないことと、太陽の裏側でなにか危険なことが起こっているかどうかがわからないことだ。しかし、欧州宇宙機関(ESA)が計画するミッションによって太陽の側面が見られるようになることで、こうした状況が変わり、太陽予報のための重要な材料を蓄積できるようになるかもしれない。科学者たちは、危険な太陽気象を発見するために現在運用している観測機が使えなくなる前に、「ラグランジュ(Lagrange)ミッション」を一刻も早く打ち上げようと奔走している。

これまでの宇宙天気ミッションのほとんどは、地球軌道上あるいは地球と太陽の間にあるラグランジュ点「L1 」で実施されてきた。ラグランジュ点とは、宇宙において互いに周回する2つの天体に対し、ある物体が常に同じ相対位置に留まるような位置を指す。たとえば、L1にある物体は、太陽から見て地球の真正面に留まり、いつでも継続して太陽を観測可能だ。つまり、データ取得の目的で一定の場所に留まるためのエネルギーが少なくて済み、特に太陽観測用人工衛星などの科学ミッションにとって非常に望ましい場所となる。

しかし、L1だけでは太陽の片側しか観察できない。ESAのラグランジュ・ミッションは、地球から約1天文単位(太陽までの距離で、1億5000万キロメートル)離れて惑星の脇に位置するラグランジュ点「L5」を利用して新た …

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