来年中には、米国のボランティアに遺伝子操作された大腸菌カプセルが経口投与されるかもしれない。
合成生物学系スタートアップ企業シンロジック(本社マサチューセッツ州ケンブリッジ)は、珍しい代謝疾患の治療用に、人の胃に到達すると大量のアンモニアを吸収するバクテリアを含む経口薬を設計し、実験段階にある。
この治療(最初の臨床テストは2017年中に予定)は、シンロジックの共同創設者で、マサチューセッツ工科大学(MIT)のジェームス・コリンズ教授が「合成生物機能学」と呼ぶ方法の初期段階の事例だ。遺伝子プログラムされた腸内細菌は、体内の条件を検出すると、設計された機能が発動する。薬の配達か、診断テストに使う有色の化学物質の投与のように体内で活動するのだ。
遺伝子組み換え菌を飲むアイデアはほとんど常識を超えた行為だ。しかし、目的を与えられた細菌は、従来の経口薬や注射剤の代わりとして、病気でうまく働かなくなった人体の生理機能を引き継ぐ新しい方法になり得る。
「スマートバクテリア」は、コリンズ教授が2000年から普及させた、合成生物学手法の最初の医療使用例になるかもしれない。2000年にコリンズ教授は、電子機器をヒントに、大腸菌のトグルスイッチ(2つの遺伝子を、状態によって変化させる回路)の基本機能を作成した。この素晴らしいデモンストレーションからまもなく、プリンストン大学の科学者は発光をオン・オフできる蛍光性の細菌を作ったと発表した。
このアイデアによって、あらゆる種類の新しく、便利な機能の実現するために細胞をプログラムできる。非常に魅力的なアイデアであることは明白で、TEDトークや国際的な学生大会に数多くの専門家が登壇している。
しかし、アイデアを初めて具体的に医療用に応用したのは、シンロジックによる遺伝子組み換え経口薬の計画だ。腸内細菌である大腸菌の特徴を損なわずにいくつ …