現代の科学界において、最大の探索対象となっているものの一つが、暗黒物質(ダークマター)だ。物理学者たちは、ダークマターは宇宙を遍く満たしており、銀河の回転の仕方がその存在の根拠となっていると考えている。実際、銀河はあまりに速く回転しているので、何か隠れた質量が存在して、銀河を繋ぎ止めておくのに十分な重力を発生していない限り、散り散りになってしまうはずなのだ。
物理学者たちはこの根拠に基づいて、地球上にあるダークマターを何とかして見つけようとしている。これまでに何十ヶ所もの観測所を建設したが、その多くは、地下深くに作られた洞窟の中にある。観測データに入り込むノイズが少ない場所だからだ。ダークマターを発見した研究グループには大きな報奨が与えられる可能性が高く、研究者たちは科学的な名声と富を賭けて探索に挑んでいる。
だが、これまでのところ、物理学者たちははっきり言って何も見つけてはいない。ダークマターがどこかにあるのなら、それはとてもうまく隠れているのだろう。あるいは、物理学者たちは間違った場所を探してきたのかもしれない。可能性の一つは、ダークマターの粒子が現在の実験装置では見えないほど小さいということだ。そのため物理学者たちは、ダークマターの粒子を見つけられるような、より高性能で高感度の検出法を必死に求めている。
ここで登場するのが、イスラエルにあるエルサレム・ヘブライ大学のヨーニット・ホッホベルク助教授のチームだ。ホッホベルク助教授らは、微小な超伝導ワイヤーを使った有望な新型センサーを開発したのである。研究チームの試作品は、このアプローチが持つ可能性をすでに示している。
新しい装置の原理は単純なものだ。特定の金属を臨界温度以下にまで冷やすと、電気抵抗がゼロの超伝導状態になる。しかし、温度が上がって臨界温度を超えた途端、超伝導性は失わ …