この記事をあなたが読んでいる間にも、100万人以上の人々が航空機で移動している。いつの瞬間であっても、飛行中の民間航空機のほぼ3分の1は、航空機史上でもっともよく売れているジェット旅客機であるボーイング737シリーズだ。737は長距離と短距離飛行の双方で200億人を超える旅客を安全に運んできた。しかし737シリーズの最新ジェット旅客機である「737 MAX」の墜落事故が立て続けに2度も起こったため、同機種の安全神話が現在調査の対象となっている。
エチオピア航空の302便が3月10日、アディス・アベバから離陸後数分のうちに墜落し、乗客ら157名が死亡した。この事故は、2018年10月にインドネシアで墜落し、乗員乗客ら189人が死亡したライオン・エア610便の事故から5カ月後に起こった。ボーイングと米国政府は航空機の安全性を主張しているが(日本版注:米政府もトランプ大統領が3月13日に同機の飛行禁止命令を出した)、世界中の航空会社と航空当局が同機種の運行を停止している。
737 MAXの大まかな歴史が、これらの事故が効率性を追求するボーイングによる誤りではないかという問題を提起している。米国連邦航空局(FAA)とその他の規制当局もまた、パイロットへの航空機の変更点の伝達に問題がなかったか問うことになるだろう。
この記事を執筆中の時点では、2機の737 MAXが同じ原因で墜落したと断言することはできない。インドネシアの航空事故調査局が公開した中間報告書によると、ライオン・エア610便は、欠陥のあるセンサーが、同機が失速したと誤って報告したために墜落したという。失速しているという誤報が、安全な飛行に十分な速度に加速すべく機首を下げようとした自動化システムを始動させたのだ。パイロットは自動化システムに抗って機首を上げようと努めたが叶わなかった。
737 MAXのエンジンは、初期型よりも大きく、前世代と比較すると14%の低燃費化を実現している。航空業界誌の『エア・カレント(Air Current)』の解説によると、新しい自動化システムは、大型エンジンを搭載した737 MAXを安定化させるために設置された。新型エンジンの設置位置と形状により、状況によっては機首が上がりやすくなり、航空機が失速してしまうことがあるため、操縦方法が変わったのだ。新しい自動化システムである「操縦特性向上システム(MCAS:Maneuvering Characteristics Augmentation System)」は、その傾向を弱めることを意図されていた。
より効率的なエンジンを搭載することで航空機の自動化システムに変更が必要となった際に、航空機の安全性に妥協が生じたのだろうか? 社会学者のチャールズ・ペローが1984年の名著『ノーマル・アクシデント(normal accidents、「起こるべくし …