渦中の中国テック大手、ファーウェイ(華為)の創業者レン・ツェンフェイ(任正非)最高経営責任者(CEO)が沈黙を破り、数々の訴訟や圧力でファーウェイを妨げようとする米国の取り組みに反発している。
「米国が我々を潰すことなどありえません」。普段はメディア露出の少ないレンCEOは最近、BBCのインタビューでこう語った。「世界は我々から離れられない。我々の方が進んでいるのですから」。
虚勢を張った大言壮語だと思うかもしれないが、レンCEOの発言には幾分かの真実が含まれている。特に、人工知能分野(AI)のファーウェイの技術の進歩は世界最速クラスであり、より多くの技術分野においても急速に進歩していることが示されている。AI分野での野望を別としても、ファーウェイは次世代(5G)無線ネットワーク市場で支配的立場にあり、韓国のサムスンに次いで(そして、アップルを抜いて)世界第2位のスマートフォン・メーカーでもあるのだ。
「中国では官民挙げて、フルスタックで競争できる企業を作ろうと取り組んでいます」。ワシントンDCに拠点を置くシンクタンク「ニュー・アメリカ(New America)」のサイバーセキュリティと中国の専門家であるサム・サックス研究員は話す。「ファーウェイはその取り組みを実行しています」。
だがその取り組みは、テック業界全体の、本当に前例のない範囲にまで到達するAI戦略をファーウェイに与えることになるだろう。そして、このAI戦略が新たな多くのセキュリティ問題を引き起こすことにもなる。ファーウェイのテクノロジーの偏在性と、中国企業が最終的には政府の命令に応じなければならないという事実が、米国がファーウェイを国家安全保障に対する前例のない脅威と考える大きな理由なのだ。
ファーウェイのシュー・ウェンウェイ(徐文偉、西側諸国ではウイリアム・シューと名乗る)最高戦略マーケティング責任者(CSMO)はMITテクノロジーレビューとの独占インタビューにおいて、同社の広範なAI計画をアピールした。また、セキュリティに関する正当な実績を主張するとともに、AIによって新たに浮上するリスクと脅威に世界と協力して対処するよう努めると約束した。
シューCSMOによると、ファーウェイはAIへの投資を増額し、AIに関する取り組みを全社的に統合して「フルスタック・AIポートフォリオ」を構築する計画だ。ファーウェイは非上場企業なのでテクノロジー投資額を数値化しづらいが、 同社の関係者は昨年、年間の研究開発予算をこれまでの2倍以上となる150億ドルから200億ドルにする計画だと語った。これが事実なら、研究開発費の総支出額で世界第2位から5位の間に浮上することになる。ファーウェイのWebサイトによると、全従業員数の45%にあたる約8万人の従業員が研究開発に従事しているという。
ファーウェイのビジョンは、データセンターやモバイル機器向けのAIチップから深層学習ソフトウェア、アマゾンやマイクロソフト、グーグルのサービスに取って代わるクラウド・サービスまで多岐に渡る。シューCSMOによると、より学習効 …