「蒸気駆動」の宇宙船が小惑星探査への新たな扉を開く
宇宙探査に何世紀も前から使われている動力である「蒸気力」を使おうとするプロジェクトが進んでいる。小惑星の表面の氷から採取した水を蒸気にして推進力を得る探査機は、推進剤を使い果たす心配がなく、宇宙空間でのミッションをいつまでも続けられるはずだ。 by Erin Winick2019.03.07
小惑星資源採掘という考えが注目を集め始めた当初、多くの関連企業が水をベースとした燃料を使って宇宙船を駆動することを考えていた。小惑星には氷がふんだんにあるので、それを水素と酸素に分解して、より効率の良い燃料を作るという発想だった。毎回のミッション期間を長くするのに安上がりな方法だ。
しかし、もっとも期待されていた小惑星資源採掘会社の数々が資金調達に苦労し、結局買収されてしまった。それと共に水で推力を得る宇宙船への関心もほぼ立ち消えとなっていった。しかしここに来て、新たなプロジェクトが宇宙の蒸気時代の可能性を再び呼び起こしている。
1月に中央フロリダ大学(UCF)のチームが、水を利用して小惑星採掘、というよりは小惑星探査をする宇宙船を披露した。「ワイン(WINE:World Is Not Enough)」と呼ばれるこの宇宙船は、宇宙船の推進剤が底をついた時でも、ミッションを終える必要はなく、訪れている小惑星から直接、推進剤となる水を調達する。ワイン開発チームのアプローチは、水を分解して水素と酸素に分解するという以前の考えとは異なり、水を直接利用する。理論上はこの方法のほうがコストがかからず失敗率も低い。「その場所で手に入るものを利用したいと考えています」とUCFのプロジェクトを先導しているフィル・メツガー博士はいう。「ハイテクではなく、適切なテクノロジーを利用する必要があるのです」。
小惑星のような氷に覆われた天体に着陸した後、ワイン宇宙船は氷にドリルで穴を開ける。そして、氷を溶かした水を取り込み、宇宙船のタンク内で再凍結させ、タンクの約3分の1を占めるようにする。離陸準備ができると、宇宙船はタンク内の氷を約10日間にわたって太陽発電または原子力発電によって熱し、内部圧力を高めていく。その後、蒸気を勢いよく外へ噴出させることで得られる推進力で、宇宙 …
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