採択から1年も経過せず、パリ気候変動協定は正式に発効した。しかし、国連はパリ協定の目標達成には、各国政府が二酸化炭素排出量をさらに大幅に削減させる必要があるとしている。
パリ協定は昨年12月に採択され、先月、正式に批准国数が発効要件を満たした。11月4日時点で、米国や中国、EU加盟国等の締約国は法的拘束を受ける。締約国(現時点で日本は批准していない)は、今後化石燃料の削減に力を入れ、地球の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2℃未満に抑える。
「協定の発効は記念すべき節目です」と国連気候変動枠組条約のパトリシア・エスピノーザ事務局長は声明で述べた。これほど規模の大きい国際協定は、達成が困難だから、エスピノーザ事務局長は正しい。協定発効までの交渉は困難を極めたが、パリ協定は人類の希望の光であり、気候変動の影響を減らすと努力されることを意味する。
しかし、エスピノーザ事務局長は、協定が発効した現状に安堵してはならないと訴えた。
「慎重な判断と新たな意思を胸に、今後の課題に備える機会でもあります。短期間のうちに(略)脅威を増す気候への影響に耐えられる社会を構築し、温室効果ガス排出量を大幅に削減する、これまで以上に大きな取り組みが必要なのです」
実際、新たな国連の報告書が警告しているとおり、各締約国がこれまでに提示している二酸化炭素排出の削減目標では不十分だ。報告書によれば、2030年までの削減目標では、2100年までに地球の平均気温は3.4℃上昇する。平均気温の上昇を2℃未満に抑えるには、削減目標値をさらに25%増やす必要だ。
サイエンス誌に掲載された新たな研究結果を読めば、二酸化炭素排出量が地球に及ぼす影響の大きさを締約国も深刻に受け止めるだろう。推定では、二酸化炭素が1トンずつ排出されるごとに北極の氷原で3平方メートルの氷が溶け、1000ギガトン分の二酸化炭素が大気中に追加(気温の上昇が2℃を越える前に排出できるのとほぼ同量)され、夏の間に北極海の氷はすべて溶けた状態になる。
エスピノーザ事務局長がいうとおり、パリ協定の発効はよいニュースだ。しかし今の状況は、達成すべき状態からは程遠い。
(関連記事:Reuters, UN (PDF), Science, “発効要件満たしたパリ協定はただの紙切れに過ぎない,” “Paris Climate Agreement Rests on Shaky Technological Foundations”)