世界を震撼させた「遺伝子編集ベビー」誕生、おもな動きのまとめ
生命の再定義

China’s CRISPR twins: A time line of news 世界を震撼させた「遺伝子編集ベビー」誕生、おもな動きのまとめ

MITテクノロジーレビューが、クリスパーによる遺伝子編集を受けた双子の女児が誕生したと報じてから3カ月。この間、米国の大物科学者の関与の疑いや遺伝子編集による知能向上の指摘などさまざまな動きがあり、騒動は思わぬ展開を見せている。 by MIT Technology Review Editors2019.02.27

中国の科学者である賀建奎(フー・ジェンクイ)元准教授が、遺伝子編集技術「クリスパー(CRISPR)」を使って遺伝子編集ベビーを誕生させたというニュースが昨年11月に報道されてから、多くの動きが起きている。この記事では、主な出来事を時系列にまとめた。見過ごしたニュースを確認し、事件の全体像を把握するのに役立つはずだ。

2018年11月25日: 南方科技大学(中国深セン市)のフー准教授(現在は解雇されている)率いるチームが、世界初の遺伝子編集ベビーの誕生に協力する複数の夫婦を募集。目的は、胚のDNAからCCR5遺伝子を除去し、HIV、天然痘、コレラに耐性のある子孫を作ることだった(MITテクノロジーレビュー「特報:世界初「遺伝子編集ベビー」が中国で誕生、その舞台裏」を参照)。

フー元准教授は7組の夫婦で胚を改変し、一件の妊娠に成功。双子の女児が誕生したと発表した(AP通信)。

フー元准教授は、YouTubeに映像を投稿し、ルルとナナと命名された双子の姉妹が予定より2週間早く誕生したと発表した(YouTube)。

2018年11月26日:フー元准教授の発表に対し、国際的な抗議の声が上がる。多くの科学者たちがフー元准教授の行為を非難し(ネイチャー)、中国当局はこの実験が中国の法律や規制に違反していないか調査を開始した(MITテクノロジーレビュー「遺伝子編集ベビーの衝撃:大バッシングにも負けない中国人研究者の言い分」を参照)。

クリスパーによる遺伝子編集手法の共同開発者のひとりであるフェン・チャン教授が議論に参加。 遺伝子編集ベビーに対する世界的な停止を呼びかけた(MITテクノロジーレビュー「遺伝子編集ベビー誕生:「即時停止を」CRISPR共同開発者が声明」を参照)。

米国のライス大学、フー准教授の研究を援助したとして、同大学のマイケル・ディーム教授に対する「徹底調査」の実施を発表(AP通信)。

2018年11月28日: フー元准教授が、香港で開催された国際ヒトゲノム編集サミットで自身の実験を擁護し、「誇りに感じています」と発言(スタット)。

フー元准教授は同会議で、2例目の遺伝子編集ベビーの妊娠が進行中であることを発表した。(MITテクノロジーレビュー「遺伝子編集ベビー問題:「2例目も妊娠初期」中国人研究者が主張」を参照)

2018年11月29日: 中国当局、フー元准教授と同僚に研究活動の即時中止を命じ、「極めて言語道断」で、中国の法律や科学倫理に反している研究だと非難(新華社通信)。

2018年12月28日: ニューヨーク・タイムズ紙、フー元准教授が10人以上の未確認の警護男性が取り巻く中、深センにある大学のゲストハウスで軟禁されているらしいと報道(ニューヨーク・タイムズ)。

2019年1月18日: 中国の国営メディアの新華社通信、2人の遺伝子編集ベビーの存在を確認し、フー元准教授は「富と名声」のためにこの実験を主導したと報道。調査チームは、このプロジェクトの設立、資金調達、「外国人」を含むチームの編成などを、フー元准教授が自ら実施したと発表した(MITテクノロジーレビュー「世界初の「遺伝子編集ベビー」は実在、中国当局が確認」を参照)。

2019年1月28日: 米国のノーベル賞科学者クレイグ・メロー教授が、遺伝子編集ベビーの妊娠が進行中であることを知っていたと認める。メロー教授はフー元准教授が創業した企業の1つであるダイレクト・ゲノミクス(Direct Genomics)の顧問を務めていた(AP通信)。

2019年2月7日: スタンフォード大学、同学の高名な教授たちがフー元准教授の遺伝子編集に関して何を知っていたかについて調査を開始(MITテクノロジーレビュー「遺伝子編集ベビー誕生に大物科学者らが関与の疑いスタンフォード大も調査へ」を参照)。

2019年2月20日:クリスパー・ジャーナル(CRISPR Journal)編集部、フー元准教授が11月に発表した遺伝子編集の倫理についての論文をすべて取り下げ。同誌はクリスパーベビーについて何も言及していない(GENニュース)。

2019年2月21日: フー元准教授のCCR5遺伝子除去の試みにより、双子の女児の認識能力と記憶能力に影響のある脳の部分が変えられた可能性があることを、新しい研究成果が示す(MITテクノロジーレビュー「遺伝子編集ベビー問題:科学者らが指摘する隠された「もう1つの狙い」」を参照)。