利用者数2600万人突破
過熱する「DNA検査」商戦
MITテクノロジーレビューの推定によると、消費者直販型の遺伝子検査を受けた人の数が2600万人を突破した。だが、大手2社による寡占をはじめ、検査結果に科学的根拠が乏しいこと、犯罪捜査に使われることによるプライバシー侵害といった課題を抱えている。 by Antonio Regalado2019.03.08
2018年におけるDNA検査の購入者数が、それ以前の購入者数の合計とほぼ同じだったことが、MITテクノロジーレビューの調査で明らかになった。
2018年に遺伝子検査が記録的な売上を達成した背景には、テレビ広告とオンライン広告を通じた大規模なマーケティングキャンペーンにより、祖先や健康に対する人々の関心が球速に高まったことがある。消費者は、試験管に唾液を入れたり、綿棒などで頬の内側をこすったりして採取したサンプルを検査会社に送り返せば、自分のゲノムを解析してもらえる。
MITテクノロジーレビューの推定では、2019年初めまでに、2600万人を超える消費者が自身の遺伝子情報を、遺伝子検査会社大手4社の祖先や健康に関するデータベースに登録している。このペースが続けば、これらの遺伝子データバンクは、24カ月以内に1億人以上の遺伝子データを保有するようになる可能性がある。
遺伝子検査ブームが、2社の巨大企業を生み出している。ユタ州レヒに拠点を置くアンセストリー(Ancestry)と、カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を置く23アンドミー(23andMe)だ。これらの株式非公開企業は現在、世界最大規模の人間の遺伝子データを保有している。
消費者にとって、わずか59ドルほどしかかからない遺伝子検査は、祖先についての手がかりを得たり、知らなかった兄弟の存在といった家族の秘密を知ったりする機会を提供する娯楽ツールだ。だが、プライバシーへの影響は、それよりもはるかに大きい。これらのデータベースが大規模化することで、遺伝子検査を一度も購入したことがない人を含めて、ほぼすべての米国人同士の血縁関係をたどることが可能になった。
アンセストリーのプライバシーポリシーには、「当サービスを利用する際、お客様自身や家族に関する予想外の事実が発覚する可能性があります。一度発覚した事実を取り消すことはできません」という警告が記されている。
遺伝子検査とは何か
遺伝子検査会社は、顧客から唾液や口腔粘膜のサンプルを受け取ると、その細胞からDNAを抽出する。その後、DNAコードが人によって異なる約60万カ所の塩基配列を解読するチップを用いて、抽出したDNAを分析する。ある生物種集団の塩基配列において、一つの塩基に異なる多様性が見られることを「一塩基多型(SNP)」と呼ぶ。
あなたの各遺伝子が、十数種類あるフレーバーのいずれかのフレーバーを持つとしよう。検査は、あなたがチョコレート味のような非常にありふれた遺伝子を持つのか、ピスタチオ味のような珍しい遺伝子を持つのかを決定する。遺伝子のフレーバーの特定の組み合わせにより、先祖がどこから来たのか、データベースに登録された他のメンバーとどれだけ近縁な関係にあるのか、特定の遺伝的形質を持つかどうか、という3つの点が明らかになる。
たとえば今年、米民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員が、実際に遠い昔の祖先にアメリカ先住民を持つことを遺伝子検査で示した。遺伝子検査でそうしたことを証明できるのは、世界の各地域に住む人が異なる遺伝的特徴を持つからである。人間の集団が分岐して離ればなれになった先史時代から長い年月をかけて、このような違いが現れた。
消費者の多くは、お互いのDNAを比較するために遺伝子検査サービスを利用したいと考えている。2人の遺伝子型の大部分が同じである場合、この2人は近縁関係にあることになる。最後に、DNA検査により、耳たぶの形やコリアンダーの好き嫌い、がんのリスクの高低などの遺伝的形質が明らかになる。23アンドミーは、このような十数項目以上の遺伝的形質を特定するレポートを消費者に提供する。
利用者数
MITテクノロジーレビューは、遺伝子検査会社大手4社による公式声明や本誌の報道に加えて、遺伝子系譜学国際協会(International Society of Genetic Genealogy)が保 …
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