アメリカの半導体産業は、有利な新戦略を編み出せるか?
半導体産業の専門家による作業部会設置により、米国の半導体企業が海外の競争相手を打ち負かす新戦略を策定し、補助金をばらまいて米国の優位を維持しようとしている。 by Jamie Condliffe2016.11.02
米国の半導体産業はますます海外との競争に直面しているが、米国政府は専門家による新たな提言により、今後も持ちこたえてくれることを願っている。
半導体産業はまだ調子が悪いわけではない。ホワイトハウスによれば、25万人の雇用があり、米国製品の輸出品目では3番目に大きい。インテルはいまでも世界最大の半導体メーカーだ。しかし、半導体産業の競争優位は間違いなく衰えてきた。
大まかには2つの原因がある。まず、低消費電力プロセッサに特化しているARMのように、モバイル機器向け半導体の設計に特化した企業が支配力を持つ領域で、インテルやAMDなどの米国企業が停滞していることだ。2番目の原因は、アップルのような米国企業が、同じく米国企業であるグローバルファウンドリーズのような企業によって製造される半導体を設計するときでさえ、ハードウェアそのものは海外で製造されることが多いことだ。
別の脅威も迫っている。特に中国は自国の半導体産業に1000億ドルの助成金を投入している 一方、ムーアの法則どおりに半導体の性能が上がらなくなりつつあることは業界全体の頭痛の種だ。
新しい作業部会(インテル、クアルコム、マイクロソフト等の業界の古参企業がメンバー)は、こうした問題のいくつかを克服しようとしている。合衆国科学技術政策局(ホワイトハウスの部署で、局長は大統領に科学技術政策の助言をする)のジョン・ホルドレン局長は声明で、作業部会は「自国と海外で米国の半導体産業が直面している課題を認識し、米国の主導権を維持するための大きな可能性を確認する」ことになる、と説明した。
実際、量子力学の限界を回避する半導体製造技術や光コンピューティングの手法、専門化を極めた半導体など、見込みのある新しい戦略を見いだし、重点的に投資することになるだろう。半導体工場(テキサス州オースティン)へのサムスンの10億ドル投資のような民間による場合もあるが、投資の多くは政府の負担になるだろう。
今のところ、米国製iPhoneは幻に終わるかもしれないが、 少なくともiPhone内のチップは、多くがアメリカ内で製造されることになるかもしれない。
(関連記事:The White House, Reuters, “The All-American iPhone,” “Intel Tries to Rearchitect the Computer—and Itself,” “Chip Makers Admit Transistors Are About to Stop Shrinking”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。